アニメの世界配信を手掛けるクランチロールが主催する、アニメクリエイターを称えるアワード「クランチロール・アニメアワード」の2025年の開催が5月25日に決まった。
昨年までは、3月の開催だったのだが、2カ月ずれることになった。これは対象作品の期間変更によるものだ。昨年までは、対象となる作品を9月で区切っていた。どういうことかというと、例えば、2024年3月のクランチロール・アワードのノミネート資格があるのは、2022年10月から2023年9月までに放送・配信・上映された作品だった。今回、これを1月から12月までを対象期間として、その1年のアニメのアワードとしてわかりやすくしようという意図だ。
対象期間変更で、より「その年の賞」という雰囲気に
これの変更は良いと思う。
実際、僕は2024年のアワードの審査員をやらせていただき、ノミネート作品選びを手伝ったのだけど、「あれ?この作品は対象外なのか」とか「これって去年の作品だよな?」みたいなことがよくあったのである。
クランチロール・アニメアワードがファン投票によるアワードなので、集計期間もあるので、3月開催だと12月以降に集計を始めると間に合わなかったのかもしれない。なので、2025年からは、5月開催としてバッファを設けて開催しようと言うことだと思われる。
こうした賞は、記録に残るものなので、その年ごとに区切った方が後から振り返る時にもわかりやすいだろう。2024年に開催されたのに、2022年の作品が受賞していると、「あれ?一年ずれてね?」みたいな感じもするし。
あと、3月はアメリカでもアワードシーズンなので、別の時期にやることで差別化を測って埋もれないようにするとか、そういう狙いもあるかもしれない。
ちなみに2025年だけは、2023年10月~のアニメも対象となる変則的な対応となるようだ。なので、「進撃の巨人FINAL」も対象になると思われる。
さらに、新たな部門として「最優秀異世界作品賞」と「ヒンディー語の最優秀声優賞」も設けられるとのこと。異世界ものがジャンルとして世界的にも定着していることをうかがわせる変更である。クランチロール・アニメアワードの賞の構成の変遷を見ると、世界のアニメのトレンドというか、ファンの動向も何となく窺い知ることもできる。
作品を泊付ける重要性
この変更を知って思ったのは、クランチロールはこのアワードをきちんと発展・成長させていくつもりがあるんだな、ということだった。
アワードとか映画祭とかというものは、その分野の発展のために箔付け装置だ。こういう箔付けを仕掛けるのが、欧米社会は実に上手い。映画やアニメ意外でも、ノーベル賞もそうだし、ミシュランガイドだって同様だ。
日本の映画もドラマもアニメも、食べ物も、別段欧米に劣っているということはない。でも、箔付けの洗練さは全く及ばない。こういう箔付け機能を軽視すると、やっぱりプレゼンスが落ちるものなのだ。こういう姿勢にはおおいに学ぶべきものがある。
クランチロールは、この箔付け機能をしっかり発展させるつもりがあるというのは、「Anime」という分野をしっかり成長させて、世界の文化として定着させようと考えているということの現れだと思う。それは、日本のアニメ業界にとってもプラスに作用することだ。
ちなみに、授賞式の運営は、ソニー・ミュージックとデンプシープロダクションズという、アメリカでもいろんな番組やアワードの担当をしている会社が担当している。デンプシープロダクションズアイスホッケーのプロリーグNHKのアワードやiHeartRadio Music Festivalなどの運営もやっているらしい。この手のアワードはやり慣れているんだろう。
ファンのためのイベントであり続けるために
クランチロール・アニメアワードに思うのは、これからもファンの方をきちんと向いたアワードであってほしいということ。ファン投票ベースのアワードというのは、色々思うところはあるのだけど、これはこれで大事にした方がいいかなと思う。ファンとクリエイターがつながれる場所であるといい。
2年前から東京で開催されるようになったが、東京時間は海外の人にとって決して見やすい時間帯ではないだろうから、何か参加した海外のファンにとって意義のある施策があると嬉しい。ネットライブ配信で行うので、双方向に繋げるやり方は何か考えられるだろうとも思うし。
アニメファンが楽しめる企画、例えば、じぇんぷフェスタでは漫画家やイラストレーターによるライブドローイングをやっていたりするけど、アニメーターのライブドローイングイベントなどがあれば、多くの人にアニメーターのすごさも知ってもらえるし、見ている方も楽しいんじゃないか。
アワードのプレゼンターに1人くらいファン代表がいてもいいと思うし。
そうそう、今年はどんなゲストがプレゼンターとして来るのかも、楽しみにしている。去年は、ミーガン・ジー・スタリオンとかポン・ジュノとかすごい大物が来ていた。アメリカに限らず世界中からプレゼンターを募っているのも特徴的で、世界のインフルエンサーを知る機会にもなるなと、2024年の授賞式に参加して思った。
国内在住の僕からすると、世界でどうアニメが受容されているのか、いろいろなゲストから直接聞ける機会でもあった。意外とそういう機会はないので、貴重な時間だったので、2025年も取材に行けたらいいな。
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