東宝が12月に出していた、機関投資家向けに出していたアニメ事業に関する資料について少し書き残しておこうと思う。
「東宝ビジョン2032」を数年前に出して、そこでアニメを第四の事業の柱にする旨を宣言していたことは以前書いたことがあるが、今回の資料はそれの実績を裏付けるものであり、投資家に対して今最も強くアピールになると東宝が考えているのがアニメだということだろう。
資料の構成は、東宝ビジョン2032の説明とアニメ事業の推移、アニメの事業構造(製作委員会の仕組みなど)、市場動向(海外が伸びているなど成長基調)、そこから東宝の強みを説明するという内容。
ここで同社の強みと謳われているのは、総合力だ。プロデュース力と展開力、そして宣伝力もあるとしている。
実際に、プロデュース力については、サイエンスSARUなどの買収して有力スタジオを傘下にして強化をはかっており、展開力についてはテレビだけでなく、劇場展開を大きく行えることが大きい、さらにGKIDSの買収で北米の配給会社も手に入れた。宣伝力も映画で培った強みがある。なにげのTOHO Gamesというゲーム会社もあるので、ゲーム化もいける。マーチャンダイジングも、東宝はゴジラでやってきた経験があるし、映画館という訴求力の高い店舗を持っている。
この資料で注目したいのは、「アニメの成長戦略」(P24〜)だ。成長戦略として4つのキーワードを掲げている。
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世界中のお客様に、新たな感動を与えられるようなオリジナル作、より多くの良作を直接届けていきたいという。
オリジナル作品を作るとしている。これまでのところ、TOHO Animationを牽引しているのは、原作ものだ。この資料の最初の方に紹介されている作品群も有名マンガを原作にした作品がズラッと並んでいる。東宝としては、この路線でどんどん有力なマンガに手を付けていくという流れなのかなと思っていたが、オリジナルのIP開発にはやはり興味があるようだ。
実際、これらの作品は幹事会社としてイニシアチブを取れる立場とはいえ、原作サイドの意向を無視してなにかできるわけではない。東宝はゴジラなど、独自IPを持っている会社だが、アニメにおいてはまだそういう存在って実はない。今後、同社がオリジナル作品の開発をどう進めていくのか、注目していきたい。
実際、アニメ作りは時間がかかるので、どうしてもオリジナルとなるとさらに時間が必要になる。有名マンガを引っ張れるならその方が早いというモデルになってしまっているのだが、オリジナルで有名原作ものと同じレベルで当てることが可能なら、それが会社にとっても利益を最大化できる。実際、ゴジラは自社で完全出資して儲けているわけで。
オリジナルIP作りという点では、ソニーのようにKADOKAWAのような出版社への出資という方法もありうるかも。東宝は直接原作を作れる会社を自社で抱えていない。今後、ここにテコ入れをはかる可能性はあるかもしれない。
ちなみに、こちらの資料も合わせて読むとより理解が深まると思う。
TOHO GROUP INTEGRATED REPORT 2024
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