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【C105購入レポ】米山舞さん描き下ろし!同人誌『2DOT.』でアニメの色と表現の深淵を学ぶ

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アニメの仕上げの仕事をされている伊藤唯さんの同人誌『2DOT.』は、アニメの仕上げの工程の解説と、その魅力についての内容だ。

「2DOT. Animation Paint Making」というタイトルの冊子の表紙です。カラフルなイラストが描かれており、制服を着た赤い三つ編みの少女がウィンクをしながら手を伸ばしています。彼女の隣には、青い鮫の抱き枕を抱えた黒髪の少女が描かれています。背景にはカーテンと壁掛けの絵が見えます。表紙には関係者名が英語で記載されており、サークル名やアニメーター、ペイント担当者の名前が目立っています。

この本は、とても勉強になったし、面白かった。さらに、ファンアイテムとしても貴重だ。
 

アニメの完成度を左右する仕上げ

まず、仕上げとは「彩色」のことだ。この本を読めば他にも仕事があることがわかるが、ほぼイコールのものを思われているといっていいし、仕事の大部分が指定された通りに、線画に色を塗っていく仕事になる。

アニメの色は膨大だ。以前、動画工房の色彩設定の石黒けいさんに取材した時には、1キャラクターのノーマルの色だけで120色くらいはあるのでは、と言っていた。それに加えて、「色がえ」と呼ばれるパターンも100種類くらいあったりするらしい。外の光の下と部屋の照明の下では色は違っているものだし、朝の光と夕方の光でも異なる。夜もある。さらに、心情に寄り添った形で色を変えたりすることもある。

この同人誌では、そんな「色がえ」によって、同じ原画であってもどれだけ印象が変わるのかを、わかりやすく提示してくれる。具体的には、同じ原画に対して、「昼」と「夜」の差分を見開きで掲載しており、一目で雰囲気の違いが比較できるようになっている。仕上げの重要性がとてもよくわかるし、色の違いだけでこれだけ演出できるということもわかってくる。

この本は完成品の絵だけでなく、その作業工程のステップ・バイ・ステップで見せてくれる。これを見るとただ指定された色をパソコンのソフトで置いているだけじゃないことがよくわかる。線のはみ出しを修正してきれいにしたり、ドットの汚れみたいなもの消していく。さらに塗れた後も、背景に合わせてどう調整するかを検討していく。

この工程を、通常のアニメの塗りの場合と雑誌などのイラストの場合の「版権仕事」の場合との分けて掲載。ラフから原画、彩色済みのイラストを比較できるようにもなっていて、仕上げの面白さが一望できる。
 

米山舞や河本有聖など有名イラストレーターが参加

先に、ファンアイテムとしても貴重と書いたが、それはかなり有名なイラストレーターが参加しているから。米山舞のオリジナルのここでしか見られないイラストが掲載されている。しかもラフと原画、彩色の完成品と3段階で見られる。その他、参加しているのは河本有聖とブミィの2人。

C105でもこの本は結構人気だったようだが、これらのイラストレーターのファンの方も結構購入しているのではないかと思われる。僕自身、米山舞さんのイラストが大好きなので、仕上げの勉強ができるとともに米山さんの新規イラストが見られることが楽しみだった。

 
巻末には、『スチームボーイ』や『電脳コイル』で知られる中内照美氏と、『86』や『SAND LAND』の安倍なぎさ氏との座談会も収録されている。セル時代の思い出話から、会社員時代とフリーランス時代の比較、業界に入ったきっかけから、好きなシーン色と話は多岐にわたっている。

また、装丁もとても凝っている。表紙は透明にイラストを掲載して後ろの背景と合わせるアニメのレイヤー構造みたいになっていて、しかもフォトショップ風の編集画面風のデザインになっている。3000円するのも納得の良い出来栄え。一目見て「金かかってるなあ」と感じると思う。

 
総じて、仕上げの仕事に興味ある人にはおすすめ。アニメを演出や作画、ストーリーだけでなく色の面から深く楽しみたいという人にもおすすめだ。なぜ、このシーンでは色を変えているのかとか、画面の色の構成について敏感な感性を養ってくれる本だと思う。
 
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