2014年公開の水島精二監督のフルCGアニメーション映画『楽園追放 -Expelled from Paradise-』が、2024年突如、続編『楽園追放 心のレゾナンス』の制作を発表、1作めはリバイバル公開もされていた。
当時、僕も見てとても面白い作品だと思っていたし、映画館勤務時代、ブッキングしたこともある。封切りではなく、ムーブオーバーなので、だいぶ遅れての上映だったが、それでも割とリピーターのお客さんが来てくれたことを覚えている。
とはいえ、全国での興行で大ヒットというわけでもなかったので、続編展開があるとは思っていなかった。それが10年ぶりに突然の続編発表。
まつもとあつしさんの「アニメ★マナビ」Vol.06は、そんな水島精二監督に独占インタビューで、『楽園追放』続編構想についてお聞きしているのだ。
本作の続編構想は、10年前から話としては出ていたらしい。しかし、脚本の虚淵玄氏がなかなかのってこなかったらしい。それが2020年に「できそう」という連絡があり、具体的に企画が進み出したとのこと。いわゆる「気持ち待ち」ってやつだったようだ。
『楽園追放』はCGアニメなので、話は技術的な挑戦についての話題が多い。この10年での変化としてフェイシャル(表情)の表現に注目してほしいと水島監督は語る。
セルルックCGのフェイシャル表現は、この作品に限らず近年格段に良くなっていると僕も感じている。『BanG Dream!』シリーズを手掛けるサンジゲンの代表、松浦さんに昨年話を聞いたけど、やっぱりフェイシャルの話になった。
また、水島監督は3DCGの空間を活かした絵作りについても語る。広大な空間を3Dで作り、その中でキャラクターとカメラを自由に動かしているとのこと。
これは、日本アニメではないがラトビアのギンツ・ジルバロディス監督の『Away』の発想に近いのかも。あそこまで即興性はないだろうけど。あるいは、実車の現場の感覚に近い。実写の撮影ってロケ地で役者を立たせて、そこでカメラアングルも役者の動きも決めていくというやり方も多い。感覚として、そういう方向に近いではないか。最も全シーンではなく、4箇所そういうシーンがあるということらしい。
またアニメ業界の人材不足について、CGの利用という観点からも発言している。昨今、3Dレイアウトはアニメでよく利用されているが、そうするとアニメーターのレイアウトを描く能力が低下する問題についてなどだ。水島監督は、「アニメ業界には人を育てるプロセスが欠落している」という。これは業界全体が考えないといけないことで、少しずつそういう方向に進んで入るものの、作品数が多くて追いつかない現状があるとのこと。
そうですよね、としか言いようがない。
その他、アニメの中間生成物のアーカイブについて、アニメの中間素材データベース(AIMDB)の可能性についての原稿も収録されている。こちらも専門的な内容であるが、業界にとって大切な内容と言える。水島監督のインタビューとの関連で言えば、中間素材へのアクセスのしやすさが業界全体が上がっていくことで、育成への貢献にもつながる。人を育てるプロセスの欠落と、アーカイブへの意識の欠落はどこかでリンクしている気がするんですよね。
そういう意味で、一見関係ない原稿が並んでいるようで、どこかでつながっている並びの原稿だと思います。
『楽園追放 心のレゾナンス』がますます楽しみになるインタビューでした。公開は2026年予定とのことで、まだまだ先ですが期待して待ちたいと思います。
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