NHKの大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』の放送が始まった。
NHKの放送開始100周年となる節目の年の大河ドラマの題材に選ばれたのは、江戸時代のメディア王、蔦屋重三郎。果たして、どんなドラマになったのか、さっそく振り返ってみる。
蔦屋重三郎とは
蔦屋重三郎は、江戸時代の中期から後期にかけて活躍した版元だ。吉原で本屋「書肆耕書堂」を開業し、卸の仕事も請け負い、自ら本の出版をするようになっていく。遊女絵で一斉を風靡し、当時の出版界の中心、日本橋へと進出。巨大な版元へと成長していった。
しかし、飢饉などの政情不安から取締が厳しくなると、重三郎も処分を受けたりするようになる。しかし、様々な創意工夫でそれまでなかったタイプの書物を生み出しては、多くの才能をプロデュースすることになってゆく。喜多川歌麿や葛飾北斎、曲亭馬琴、東洲斎写楽など名だたる人物の作品を世に送り出してきた名プロデューサーであり、江戸の文化を花開かせた功績を持つ人物といえる。
破天荒で型破りな男の半生を、横浜流星が演じる。
気になる第一話の内容は?
物語は、1772年の江戸の大火から始まる。子どもを一人拾いながら火事から逃げる様から、古いものが燃え落ち、新しいものが立ち上がる様を連想させる入り方だ。
ナレーションは綾瀬はるか。彼女は九郎助稲荷の人の化身としても登場した。吉原の風習や細かいルールなどを綾瀬はるかの語りで説明しながら、進んでいく。この時代は戦のない泰平の世であるが、欲深い人々の別の「戦」が展開していることをナレーションで告げている。
火事から1年後、蔦屋重三郎は茶屋(吉原の案内所)に務めながら、個人で貸本屋を営んでいた。商売相手は吉原の女郎たちだ。馴染みの駿河屋には、幼馴染の花の井もいる。
2人には、朝顔という女郎を姉と慕っていた。しかし、彼女は病を患い浄念河岸(じょうねんがし)に追いやられていた。浄念河岸とは、羅生門河岸と並んで吉原で最も安い遊女の行き着く場所だ。華やかなメインストリートとは裏腹の薄暗く汚い家に住まわせられている女郎たちは、重三郎の持ってきた食事を奪うようにあさる。
ちなみに、羅生門河岸は『鬼滅の刃』遊郭編で登場した堕姫と妓夫太郎が生まれた場所だ。興味のある方は、以下のエントリーを見てほしい。
『鬼滅の刃』堕姫と妓夫太郎について書きました – Film Goes with Net
重三郎は、吉原は格差社会であると語る。それを裏付けるように、女郎の経営層は業火な食事を食べているところが描かれる。朝顔は病で死んでしまい、同じように苦しんでいる女郎がたくさんいるなか、重三郎は経営層の連中に直談判するが、邪険にされてしまう。
「俺等は女郎に食わせてもらってる。吉原は女郎が神輿で、女郎が仏じゃないのか」と訴える重三郎。今度は、窮状を知ってもらいなんとかしてもらおうと田沼意次(渡辺謙)に直談判に行く。無断で営業している宿場や岡町を取り締まってもらえば、吉原に客足が向くと考えたが、田沼は重三郎に「人を呼ぶ工夫が足りんのでは」と指摘する。
吉原に戻ってきた重三郎は、親父連中に袋叩きにされるが、吉原に客を呼ぶアイディアを思いつく。それは吉原細見のようだが・・・。というところで第一話が終わった。
吉原の苦しい現状と文化としてのユニークさ、両方を見せる構成で、重三郎は弱いもの味方であるという立場を強く押し出す構成になっていた。冒頭で、親とはぐれた子どもを助け、面倒を見ることにし、弱っている朝顔を気にかける。権力者に対しても物怖じしせず、意見を真正面から伝える熱い男として描かれる。
横浜流星が熱血漢を演じる
主演の横浜流星は、快活で人情に溢れた熱血主人公を好演している。まっすぐな情熱を持った突破力のあるキャラクターで、痛快な活躍をこれから見せてくれるだろう。
小芝風花演じる花の井はその美しさを見せつける。渡辺謙はさすがの重厚さ。厠の男というクレジットで安田顕がきになる。いやまあ、公式サイトですでに役名がでているのだが、「厠の男」て。一話で出てきた中では、強いインパクトを残す登場だった。
また、伊藤淳史のクズっぷりがすごかった。
また、面白いのは吉原の客として、長谷川平蔵宣以が登場すること。『鬼平犯科帳』がこんなところで出てくるとは。
第二話以降では、重三郎がどんな機転で吉原に客を呼ぶのか、その工夫が描かれていくだろう。第一話は導入としてなかなかおもしろかったと思う。
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