[PR]

NHKドラマ10「東京サラダボウル」第二話レビュー:誤訳が招く誤解と言葉なしに伝わる態度

[PR]

NHKドラマ10『東京サラダボウル』の第二話は、誤訳を題材にしたエピソードだった。

※『東京サラダボウル』第一話のレビューはこちら。

完璧は翻訳は存在しない。どれだけ頑張ってもニュアンスは完璧に他の言語で再現できるものではないし、文化特有の言い回しや表現というものがある。さらに、その上、スラングも最近は多い。第二話ではこれらの要素が誤訳となって、取り調べの内容が食い違っていく様が描かれる。

冒頭、東新宿署の刑事がベトナム人の被疑者に対して「天網恢恢疎にして漏らさず」と言い出して、通訳さんが困る。翻訳しづらい言葉をそのまま日本人相手と同じ感覚で使う人っている。それに対して主人公の鴻田麻里(奈緒)は、主語も述語も省略せずに話すので、通訳しやすいという。

この感覚はわかる。僕もアメリカに住んでいたので通訳させられる場面てあったりするのだが、訳しやすいもの、訳しにくい言い方ってあるのだ。訳しにくいものは、頭の中でその文章を咀嚼して、英語にしやすい言い回しに組み替えてから翻訳しないといけない。これが慣れているプロの通訳なら瞬時にできるのだろうが、慣れていないとかなり大変である。プロの通訳のスキルは本当にすごい。

今回のエピソードでは、そんな相手のことを考えられないおじさん刑事が登場する。有木野了(松田龍平)が中国語の最近のスラングを知らずに誤訳してしまったことを謝罪させるシーンは、言葉を翻訳することの意味について考えさせられる。被疑者の女性は、あじさん刑事がこちらをバカにしていることが、言葉はわからなくても伝わるという。言葉がわからなくても伝わるものは確かにある。一方で、細かい言い回しひとつで取り調べの内容や方向性が変わり、罪状にまで影響してしまうかもしれない。コミュニケーションって本当に難しい。

そして、話は有木野の刑事時代の話も絡んでくる。かつて有木野が何をやって刑事を辞めたのか、東麻布警察署で操作情報を漏らしたことで死人が出たという話があると先輩刑事から聞かされる鴻田は、その事件を検索し、「刑事が意図的な誤訳」という見出しを見つける。それを誰がやったのかはまだわからないが、今回のエピソードのテーマが「誤訳」だったのは、この展開につなげるためだったということだろう。構成的には上手いと思う。

それにしても、1話に続き2話でも異国の美味しそうな料理を出してきた。今回はスリランカ料理だ。毎回、異国グルメを出していくのだろうか。東京はいろいろな国の料理が楽しめる街になっているので、良いと思う。
 
関連作品