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フジテレビ問題:メディアとは「信頼」を基盤にした商売であるということ


今週は、なんだかんだでフジテレビのことをばかり考えている気がする。

港社長の会見失敗を機に、スポンサー企業が続々とCMを差し替え、コマーシャルの半分以上がACジャパンのものとなる異常事態が続いている。さらに、そのCM料金の返還を要求する企業も出てきている。こういう情報が表に出ているのは、各企業の広報がメディアの問い合わせに対して、そのように普通に回答しているということなんだろう。個別の交渉事については、普通はオープンにしないが、企業はこのフジテレビ問題に関しては、隠し事をしない方が得策と考えているのかもしれない。

フジテレビ側は、この異常事態を受けて社内の社員に対する説明会を実施し、かなり紛糾したという報道がされている。そして、CM料金を請求しない方針という報道もある。これは結構驚いたが、とにかく信頼委を回復しないと、今後の事業計画がにっちもさっちもいかないと、相当の焦りがあると思われる。

週明けの1月27日には、再度記者会見が開催されることも発表された。今度はクローズドなものではなく、映像も入れて、記者クラブ以外のメディアも入れた形となるという。

しかし、この会見で何を話すのだろうか。日弁連のガイドラインにもとづく第三者委員会を設置して調査してもらうことは、すでに発表されているが、まだ調査は始まっていない(3月にとりあえずの結論を出すとのこと)。新しい、具体的な事実が出てくるわけではななさそうなので、会見の内容は、前回の会見があのようなクローズドな形になった経緯の追求、そして現体制は維持されるのかどうかの追求が主だろうか。

僕自身は、もう現在の経営陣の体制は解体するしかないと思っている。だれも責任とらないでは、会社として持たないし、信頼の回復をすることはできないだろう。今、企業がCMを引いているのは、端的に言ってフジテレビの経営陣が信用できないからだ。ということは、信頼回復の第一歩は経営陣の刷新ではないか。

僕は、新しい経営者に外部から人材を招へいできるなら、その方がいいと思っている。生え抜きの人材である必要はないのではないか。フジテレビの長年に渡る商習慣、社風などが今回の問題を引き起こしたのだと疑われているということは、そういう社風に染まっていない人物を立てた方が信頼の回復につながるんじゃないか。

もちろん、大胆に若返りを図るのも選択肢としてあると思う。現場には志も能力も高い人はいるだろうし。

 
しかし、今回のことは「信頼」というものがいかに脆いものかを示す例になりそうだ。メディアにとって信頼は何より重要なものだが、信頼の根拠は結構曖昧で不透明なものだ。だから、案外たやすく崩れてしまう。そして、一度崩れるともう一度立て直すのはとても大変。

案外、社会というものは不透明な信頼関係によって成り立っている。何かの情報を信じるのは、その発信元に何らかの信頼を置いているからだが、かなり厳密に突き詰めると信頼にははっきりとした根拠がない。長年の蓄積による「何か」としか言いようなないというか。

今、フジテレビはその長年の蓄積を一気に吐き出してしまっている状態だ。しかも、吐き出してしまったきっかけは社長の会見だ。社員の不祥事なら、その社員は首になるだろうけど、社長をクビにできるのは、会長や取締役会とかになると思うが、それら全体が信用できない状態だ。日枝久会長も何も語らない。港社長が上手い会見を仮にやったとしても、日枝氏の態度が足を引っ張る。会長を辞めてもらうのは、社長を辞めさせるより難しいだろうし。

ひとつ注目しているのは、フジテレビ社員の組合加入者が急増していること。組合がこの件に関して、力を発揮できるかどうか。もし、組合が今回のことで重要な役割を果たすことができれば、日本の現在の企業と人の関係性についても何らかの変化をもたらすかもしれない。

 
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