NHK大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』の4話は、重三郎が版元としての第一歩を刻んだエピソードとなった。同時に、後の東洲斎写楽になるかもしれない人物がほのめかされた。
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吉原の女郎屋の親父連中から、一目千本の成功を認められ、今度は女郎の錦屋を作れと命じられる。しかし、錦絵は作るのに金がかかるので、金策に奔走することになる。
そこで重三郎は、呉服屋の服を女郎に着せることを思いつく。呉服屋にとっては服の宣伝になるから、呉服屋に金を出してもらおうという発想だ。しかし、重三郎は実績がないので、信用がない。そこに地元問屋の西村屋(西村まさ彦)が助け舟を出す。西村屋のバックアップで、重三郎は、呉服屋からの入銀を手にして、錦絵作りがスタート。絵師は、美人画が得意な礒田湖龍斎。
しかし、せっかくできた絵を猫に濡らされてしまい、重三郎は大ピンチ。しかし、その窮地を思いがけない人物が救う。重三郎のところに身を寄せる天涯孤独の少年、唐丸だ。見事な腕前で錦絵を直してみせる。
唐丸の素性はわかっていない。もしかして彼は後の東洲斎写楽なのではないか、という疑惑がここで出てきた。東洲斎写楽もいまだに素性がわかっていない謎の絵師だ。今回の大河ドラマでは、唐丸が写楽の正体ということになるのかもしれない。重三郎は、唐丸に向かって「お前を絵師にしてやる」と言うので、おそらく彼が唐丸をプロデュースする展開は、間違いなくあるだろう。
そして、完成した錦絵は見事な完成度。平賀源内から版元名も考えてもらい、順風満帆かに思えたが、版元から横槍が入る。仲間の版元の本じゃないと市中に流通させられないというのだ。西村屋の名義なら流通できると言われ、重三郎だけが身を引けば、錦絵は流通させられるという形で追い詰められてしまう。
「あとから来たやつは版元にはなれないってことか」と食って掛かる重三郎に、その通りだと言い放つ。この仲間内だけで美味しい思いをするやり口はいかにも日本ぽい。
親父様にも吉原のためだと言われ、忸怩たる思いで身を引く重三郎。しかも、西村屋は最初からこうする魂胆だったのだ。
江戸の商売人の汚い一面が描かれたエピソードとなったが、一方で、唐丸の以外な才能が発揮され、のちの展開に含みをもたせるエピソードとなった。
また、今回は、錦絵が登場。手柄を掠め取られたとはいえ、重三郎の初プロデュースの記念すべき錦絵だ。国立文化財機構所蔵品検索システムで見ることができる。
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なるほど、見事な絵である。完成させるには苦労したことだろう。金集めに奔走し、絵師を見つけ、呉服屋に話をつけて、駆けずり回ったのに、手柄を横取りされる悔しさ。
この悔しさをバネに、ここから重三郎がどう立ち直っていくのか、5話以降も楽しみだ。
あと、今回のエピソードに大奥の女性の役で冨永愛が登場したが、『大奥』の徳川吉宗に見えてしょうがなかった。