フィルムアート社が、同人という形態で販売した『きちんと学びたい人のための小説の書き方講座 構成篇』は、物語の構成術がコンパクトにまとめられていて、入門書として良い内容だった。
同社は、映画脚本の構成術に関する書籍を多数出版してきた実績がある。今回は小説の書き方とうたっているが、映画やドラマの脚本の書き方にも通じる、フィクションを作る上で共通の構成のあり方を取り上げている。
まず、フィクションの構成として基本中の基本となっている「三幕構成」を解説して、そこからどのように応用が派生していったのかを取り上げ、その順番にわかりやすく解説してくれる。シド・フィールドや「SAVE THE CAT」のブレイク・スナイダーなど、ハリウッドの構成術として有名なものを一通り網羅して、引用しながら、わかりやすく構成の作り方について解説している。
この本のいいところは、構成術に関する様々な書籍への言及が多い点で、自分が理解しきれない部分があれば、それに関する書籍はどれなのか、すぐに行き着けるところ。これ一冊でも勉強になるが、さらに専門的に学ぶためのガイドブックとして機能するのだ。色々な人が色々なメソッドを書いているのだが、概ね全ては同じようなことを言っているんだよ、ということもよくわかる。巻末には、それぞれのメソッドの特徴の比較表もあって、自分に合いそうななのはどれかと一望できるのもいい。
物語の構成術に関する書籍はたくさんあるので、本屋さんに行ってもどこから手をつけたらいいかわからないかもしれない。でも、本書を先に読んでおくと、勘所がわかるというか、自分にとって必要な書籍を見つけやすくなる思う。物語の構成について学びたい人が最初に手にすべき本として秀逸だ。文庫サイズで150ページほどなので、作っと読めるのもいい。
物語を書きたいと思っている人によくある勘違いとして、構成にしばられると個性が失われるのでは?というものがあるが、それがどうして勘違いなのかにもわかりやすく答えているし、書きたいけどどうしよっかなと迷っている人の背中を押すような機能も果たしてくれる本だと思う。