『東京サラダボウル』第4話は、3話「赤ちゃんとバインミー(前編」から続く前後編の完結だ。
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日本人男性と帰化した元中国人の女性の赤ちゃんが誘拐された事件の顛末が4話では描かれる。3話のラストで誘拐された赤ちゃんを世話する男性(張翰 チャン・ハン)は、鴻田麻里(奈緒)がおむつ泥棒を捕まえるために潜入捜査しているドラッグストアの常連だった。彼が赤ちゃんを誘拐したわけではない、彼はとあるメガネをかけた男(絃瀬聡一)から渡されていた。
この男は、全編の黒幕として暗躍することになると思うが、彼はボランティアと呼ばれていて、帰る手段がなくなってしまった不法滞在者に戸籍を用意して出国させているのだ。しかし、その実それは人身売買であり、今回も赤ちゃんと件の男性と同居人の女性をまとめて売ろうとしていたようだ。有木野了(松田龍平)は、売られた戸籍を使って出国するのではと考え、空港に緊急捜査の手配を願い出る。男性は、出国寸前に良心がとがめて警察に出頭。事件は解決した。
日本人の国籍を買い取って、人身売買につなげるという悪事を働くボランティアを追うことが、東新宿署の大きなヤマとなることが確認された回だった。
いたくているわけじゃない不法滞在者の存在
今回のエピソードでは、日本国内の不法滞在者の実情を描くという目的意識があったと思う。男性は、中国内で子どもを誘拐されていて、その子を探す資金を集めるために日本にやってきた。しかし、帰る手段がなくなってしまい、10年間日本に不法滞在することになってしまった。帰国の手段がないために留まらざるを得ない人というのはそれなりにいるのだろう。
国外退去処分の75%は「オーバーステイ」だそうだが、その背景には個別に様々な理由があるのだ。このエピソードの場合は、お金がなくなってしまったというだろう。こうして、物語として一例を提示することで、不法滞在というものに対する想像力が養われるのは、とても良いことだと思う。
それに、この男性も劣悪な労働環境の工場で勤務するシーンがあったが、様々な現場で外国人がいなければ仕事が回らない社会に、日本はすでになっている。この男性のような人々が、日本社会を構成する重要な要素になっているのだということをこのドラマはきちんと見せようとしているのだと思う。にも関わらず今の日本は、彼らに随分と冷たい社会となってしまっている。
様々な国の人がサラダボウルのように混じり合って、今の日本は出来ている。その現実をしっかりと見つめているこのドラマは、やっぱり貴重な作品だと、改めて感じた4話だった。