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公正取引委員会、映画・アニメ分野のクリエイター取引実態調査を開始


公正取引委員会は1月29日、映画・アニメ分野の制作に携わるクリエイターと制作会社との取引環境の実態調査を開始したと発表。これに伴い、取引上の問題に関する情報を収集するための専用情報提供フォームを、同委員会のホームページ上に設置した。

同委員会は、クリエイター個人の創造性が最大限発揮される環境を整備することを目的とし、取引の適正化に向けた取り組みを進めている。映画・アニメの制作現場では、多重下請構造が多く、制作現場への収益還元が十分でないとの指摘がある。こうした状況を受け、公正取引委員会は取引慣行の適正化を喫緊の課題と位置付け、関係者に対し調査への協力を呼びかけている。

情報提供フォームでは、契約書や発注書面の不備、発注者からの一方的な低対価の押し付け、発注の無理由取消し、無報酬でのリテイク要求、過度なスケジュール負担など、取引上の問題に関する情報を受け付ける。調査業務の効率化のため、可能な限り電話ではなくフォームの利用を推奨している。

同委員会は、昨年12月には音楽・放送番組分野における実演家と芸能事務所の取引実態調査報告書を公表しており、今回の調査はその流れを受けたものである。映画・アニメ分野は日本の代表的な産業であり、クリエイターの自由な経済活動と高い付加価値の創出が求められている。政府の「新しい資本主義実現会議」でも、クリエイターへの適正な収益還元の必要性が指摘されており、今回の調査はその実態把握の一環となる。

調査によって集まった情報が直ちに法的措置につながるわけではないが、独占禁止法、下請法、フリーランス法の観点から問題点を整理し、今後の施策につなげる方針だ。また、調査結果は令和7年内を目途に報告書として公表する予定であり、必要に応じてガイドラインの策定も検討される。

公正取引委員会は、平成21年にもアニメーション産業の実態調査を実施しており、当時の調査では取引条件の協議不足や発注書面の交付の有無、発注後の取引の在り方などが課題として指摘された。今回の調査では、業界の現状を改めて精査し、新たな課題を整理した上で必要な提言を行う考えとのこと。

同委員会は、映画・アニメ業界の特性上、多重下請構造が取引慣行に影響を与えている可能性を念頭に置きつつ、クリエイターのみならず制作会社を含む業界全体の実態を把握する方針だ。
 
映画・アニメ分野の制作に携わるクリエイターと制作会社との取引等に関する情報提供 | 公正取引委員会
 
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