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中島哲也による映画『時には懺悔を』の原作小説はどんな内容か


中島哲也監督7年ぶりの新作映画『時には懺悔を』の公開が発表され、波紋を読んだ。

というのも、中島監督は『渇き。』撮影時のヌード強要の問題が取りざたされており、そのことに対して何の声明もないままに、しれっと新作を発表するのはどうなんだという声が上がっていたのだ。

その後『時には懺悔を』の製作委員会と、中島監督本人から声明が発表された。本件は刑事訴追されているわけではなく、民事訴訟なども起こされていないため、とりあえず、今は公開待機中という形になっている。

それはそれとして、この作品の原作小説はどんな内容なのか、気になったので読んでみた。中島監督の作品に触れる前に、小説をまっさらな状態で読んでおこうと思ったのだ。
 

幼児誘拐と探偵の殺害をめぐるミステリー

小説『時には懺悔を』は、打海文三によるミステリー小説だ。初版は1994年、今から30年前の作品だ。

主人公は、探偵の佐竹。数年前まで大手の探偵社アーバン・リサーチで働いていたが独立。その頃の上司から探偵スクールのレディース一期生である中野聡子の現場実習の教官を頼まれ、面倒を見ることになる。2人はあまり相性がよくなく、しょっちゅう意見が対立している。

実習は、佐竹の友人の探偵である米本の事務所に盗聴器を仕掛けるというもの。しかし、事務所の中には米本の遺体が転がっていた。佐竹と聡子は、なぜ米本が死んでいたのか、その謎を調査していくことになる。

そして、2人は米本が調査のために録画したあるテープの存在にたどり着く。そこに写っている誰かが米本の事件に関連しているとにらんだ佐竹は、独自に調査を開始。そして、過去に起きた、障害児の子どもの誘拐事件が浮上する。

その子どもはなぜ誘拐されたのか、そして、今も生きているのか、米本の殺害とどう関わっているのか、複数の謎が交錯しながら物語が進んでいく。
 

ミステリーだが、親と子の絆がテーマ

本作はミステリーの体裁をとっているが、描いているものは親子の絆だ。誘拐された障害児は、本当に誘拐だったのか。二分脊椎症と水頭症という症状を持った赤ん坊を産んだ親たちは、そのことをひた隠しにしていたし、やがてこんな子は生まれてこなければよかったと思い出す。赤ん坊は1人で排泄も食事もできないほどの重い障害を抱えている。

誘拐事件と殺害事件がつながる時、その子どもを誰がこれから育てるのか、佐竹と聡子は事件の真相だけでなく、その難しい命題も解決せねばならなくなるのだ。

 
中島哲也監督の声明によれば、本作の撮影にはインティマシーコーディネーターを入れたと書いていたが、目立った性的なシーンは原作には特になかった(もしかして筆者が見落としてるかもしれないけど)。障害児が登場するので、その世話をするシーンなどで、排尿などを親が手伝うといった描写はあるので、こちらの描写で必要としたのだろうか。
映画監督・中島哲也より。|中島哲也

あるいは、映画は何かしらのアレンジでそういうシーンを足しているのかもしれないが。

また、映画の製作委員会によれば、重度の障害を持つ子供が出演しているそうで、ケアに精通している専門家と救急救命士の資格を持つスタッフが常駐したとのこと。小児医療や福祉分野の専門家も監修に入っているようだ。実際、読んでみた感想では、この内容なら専門家の監修の重要度はかなり高いと思う。撮影をどうやって実現させるかのみならず、描写に誤解がないかどうか、という点でも。

また映画は見ていないが、性的なシーンよりも、障害を抱えた子どもを映画撮影でどうケアするのか、という方が重要度が高そうな内容だった。

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