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『119エマージェンシーコール』5話:100回いたずら通報があっても101回目も出動させる消防員たちの覚悟と葛藤


いたずら通報は、消防の通信指令センターにとって深刻な問題である。本来救われるべき命を危険にさらし、現場を混乱に陥れる。しかし、仮に99回がいたずらであっても、100回目に本当に助けが必要な人がいるかもしれない。その葛藤のなかで、管制員はどのように向き合うべきなのか。『119エマージェンシーコール』第5話は、その難題に正面から向き合った。

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物語は、高千穂(中村ゆり)の「今日も一日なにごともありませんように」という呟きから始まる。しかし、そんな願いとは裏腹に、いたずらや不適切な通報が相次ぐ。耳が痛いという女性、足が痛いという男性(山口勝平が演じている)――本当に救急を必要としているのか疑わしい事例が続く。さらに、SNSでは「119にいたずら通報してみた」といった悪質な動画が拡散されていた。

そのなかで、粕原雪(清野菜名)が対応した通報は、電話の相手が倒れたというものだった。住所を聞き出し、救急隊が現場に到着すると、現場には倒れている人はいない。いたずらかもしれない。しかし、高千穂は「まだ決めつけるな」と指示し、通報者が部屋坂藤を間違えた可能性を考慮して現場の隊員に救急を必要としている人がいないか探すように指示を出す。通報者は連絡が取れない中、次の通報が、偶然にも同じマンションの別の部屋から入った。そして、そのタイミングでしらみつぶしに探していた救急隊員がその通報者の部屋に来てしまう。その弾性は早く救急車に乗せてくれというが、1つ目の通報が虚偽であるとまだ断定できない以上、創作を続けるしかなく、救急車をもう一台向かわせることになる。

自分を優先しないことに男は激昂する。そして、結局1つ目の通報はいたずらだった。通報者が指定した人物は「ふるかわじゅんこ」だったが、207号室に「古河順子(よりこ)」が住んでいることがわかったが、彼女は元気だった。

2番目の通報者は、そのことに腹を立て、自分より年寄りを優先したとSNSに投稿。炎上騒ぎとなる。しかも、粕原が後日、古川さんに事情を説明しているところを写真に撮られ、さらに炎上が大きくなっていく。消防への信頼が揺らぎ、クレームが殺到。高千穂は憔悴し始めていた。

上層部は記者会見を開いて事態の収束を図ると決定するが、高千穂は「現場の職員が萎縮する」と反対する。彼女は正しい対応を取ったのか、堂島(佐藤浩市)に問う。堂島は「最後は自分の判断を信じるしかない」と言い、高千穂の父が阪神・淡路大震災の現場で語った言葉を伝える。「お前が間違っていたのか、お前の下の奴らが一番わかってるよ」。

そして、再びいたずら通報の可能性がある事案が発生する。同じマンション、同じような状況。粕原は前回の通報者と声が同じことに気づく。これはまた悪質な嘘か、それとも本当に助けを求めているのか。高千穂は「救急車を出せ」と指示する。

会見の場では、田中が「消防職員はオオカミ少年を見限った村人とは違う。1%でも助けられる可能性があるならば、我々は全力で向き合う」と語る。その想いに応えるように、粕原は慎重に状況を探り、古川さんへのストーカー行為を働く男性が、ベランダから部屋に侵入しようとして腰を痛めたことを突き止め、救急車と一緒に警察も呼び出すことにする。
 
消防は100回のいたずらがあっても101回目も出動する。その使命感を胸に、職員たちは改めて自らの役割を再認識する。現場では、新たな通報が鳴る。いたずらか、本物の救助要請か。彼らは対応を続ける。

このエピソードは、いたずら通報の悪質性を描きつつも、決して「疑うこと」を優先しない消防の信念を伝えた。信頼を損なわないために、何を信じるべきか。その問いに、視聴者もまた向き合わされる回となった。