東京都、公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都写真美術館、日本経済新聞社が主催する「恵比寿映像祭2025」において、「第2回コミッション・プロジェクト」の特別賞に小森はるか氏が選ばれた。
「コミッション・プロジェクト」は、日本を拠点に活動する新進アーティストに映像作品の制作を委嘱し、映像表現の可能性を探る企画として2023年より始動した。本年度は、小田香氏、小森はるか氏、永田康祐氏、牧原依里氏の4名がファイナリストとして選出され、東京都写真美術館3階にて新作を発表。2月14日に最終審査が行われ、その結果、小森氏が特別賞を受賞した。
小森氏の受賞作《春、阿賀の岸辺にて》は、ドキュメンタリー映画《阿賀に生きる》(1992年、佐藤真監督)の発起人であり、新潟水俣病の患者に50年間寄り添ってきた旗野秀人氏を記録し、土地の記憶の継承に挑んだ作品である。一見シンプルなドキュメンタリー形式をとりながらも、異なる世代や時代を結びつける試みや、既存の作品との連続性を持たせた多面的な制作姿勢が評価された。さらに、美術館における映像展示としての可能性も期待され、特別賞の授与が決定した。
審査委員は、沖啓介氏(メディア・アーティスト)、斉藤綾子氏(映画研究者、明治学院大学教授)、レオナルド・バルトロメウス氏(山口情報芸術センター[YCAM]、Gudskul Ekosistemキュレーター)、メー・アーダードン・インカワニット氏(映画・メディア研究者、キュレーター、ウェストミンスター大学教授)、田坂博子氏(東京都写真美術館学芸員、恵比寿映像祭キュレーター)の5名が務めた。
受賞にあたり、小森氏は「撮影を始めてから10年近くが経ち、外に出すことへ怖気づく気持ちもあったが、発表の機会を得られたことに感謝している」とコメント。また、「関係性の中で生まれていく『記録』に終わりはない」と語り、制作に協力した関係者への謝意を述べた。
「恵比寿映像祭2025」は、東京都写真美術館にて2025年1月31日から3月23日まで開催される(毎週月曜休館)。入場無料で、特別賞を受賞した小森氏の作品をはじめ、ファイナリスト4名の新作が展示される予定だ。