ポルトガルが誇る映画監督、マノエル・ド・オリヴェイラ(1908-2015)の没後10年を記念し、特集上映「OLIVEIRA2025」が開催される。会場はBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほか全国で順次開催、4月18日(金)より上映が開始される。
本特集では、国内劇場初公開3本を含む、デジタルリマスター版の名作5本が一挙に上映される。映画史の生き証人とも称されたオリヴェイラの作品群を、最新の映像技術で体験できる貴重な機会となる。
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上映作品
『訪問、あるいは記憶、そして告白』*国内劇場初公開
『カニバイシュ』
『絶望の日』*国内劇場初公開
『アブラハム渓谷 完全版』*国内劇場初公開
『夜顔』
オリヴェイラは100歳を超えても創作を続けた映画界の伝説的存在であり、その作風は古典映画の様式を取りながらも、現代映画の最前線に位置していた。彼の作品は、リュミエール兄弟やジョルジュ・メリエスといった映画創成期の巨匠たちの影響を受けつつも、独自の哲学と詩的表現で観る者を魅了し続けた。
今回の特集上映では、日本未公開の3作品を含む5作品が4Kスキャンによるデジタルリマスター版として蘇る。特に、『アブラハム渓谷 完全版』は、かつて公開されたバージョンに15分の追加映像を含むディレクターズ・カット版ともいえる貴重な上映となる。また、オリヴェイラ自身が死後に公開することを望んだ自伝的ドキュメンタリー『訪問、あるいは記憶、そして告白』が日本初公開となる。
公式サイトはこちら。
4/18(金)公開|映画『オリヴェイラ2025 没後10年 マノエル・ド・オリヴェイラ特集』公式サイト
マノエル・ド・オリヴェイラについて
1908年、ポルトガル・ポルト生まれ。1931年に短編ドキュメンタリー『ドウロ河』で監督デビュー。その後、独裁政権下での制作困難な時代を経て、1970年代以降は国際的に高い評価を得る。ヴェネチア国際映画祭特別金獅子生涯功労賞(1985年)、カンヌ国際映画祭審査員賞(1999年)、名誉パルム・ドール(2008年)など数々の賞を受賞し、映画史にその名を刻んだ。2015年、106歳で逝去。
<作品紹介>
『訪問、あるいは記憶、そして告白』
*国内劇場初公開
1982年/ポルトガル/ポルトガル語/68分/原題:Visita ou Memórias e Confissões
監督・脚本:マノエル・ド・オリヴェイラ/撮影監督:エルソ・ロケ/声:テレーザ・マドルーガ、ディオゴ・ドリア/台詞:アグスティーナ・ベッサ=ルイス
出演:マノエル・ド・オリヴェイラ、マリア・イザベル・ド・オリヴェイラ、ウルバノ・タヴァレス・ロドリゲス
オリヴェイラ自身が暮らしたポルトの家、家族、そして自らの人生を辿る自伝的な作品。自らの死後に発表するように言付けられ、2015年にポルト、リスボン、カンヌ国際映画祭、山形国際ドキュメンタリー映画祭で上映された。
© Cineastas Associados, Instituto Portuges de Cinema
『カニバイシュ』
1988年/フランス、西ドイツ、イタリア、スイス/ポルトガル語/99分/原題:Os Canibais
監督・脚色・台詞:マノエル・ド・オリヴェイラ/原作:アルヴァロ・カルバリャル/撮影:マリオ・バローゾ/音楽・オペラ台本:ジョアン・バエス/製作:パウロ・ブランコ
出演:ルイス・ミゲル・シントラ、レオノール・シルヴェイラ、ディオゴ・ドーリア
厳粛な雰囲気に満ちた貴族たちの晩餐会は、やがて驚愕の展開を見せる。人間、動物、機械などあらゆる境界を侵犯し、奇想天外なユーモアが炸裂するオペラ・ブッファ(喜劇的なオペラ)映画の怪作。
© Filmargem, La Sept, Gemini Films
『絶望の日』
*国内劇場初公開
1992年/ポルトガル、フランス/ポルトガル語/77分/原題:O Dia do Desespero
監督・脚本・台詞:マノエル・ド・オリヴェイラ/撮影:マリオ・バローゾ/製作:パウロ・ブランコ
出演:テレーザ・マドルーガ、マリオ・バローゾ、ルイス・ミゲル・シントラ
19世紀ポルトガル文学を代表する小説家カミーロ・カステロ・ブランコの生家を舞台に、拳銃自殺を遂げたカミーロの最期の日々を描く。オリヴェイラ作品の中で最も厳格とも評される作品。
© Madragoa Films, Gemini Films
『アブラハム渓谷 完全版』
*国内劇場初公開
1993年/フランス、ポルトガル、スイス/ポルトガル語/203分/原題:Vale Abraão
監督・脚本:マノエル・ド・オリヴェイラ/原作:アグスティーナ・ベッサ=ルイス/撮影:マリオ・バローゾ/製作:パウロ・ブランコ
出演:レオノール・シルヴェイラ、セシル・サンス・ド・アルバ、ルイス・ミゲル・シントラ
フローベール「ボヴァリー夫人」をポルトガル文学の巨匠アグスティーナ・ベッサ=ルイスが翻案し、原作を執筆。言葉、映像、そして音楽それぞれが自律しながら完全に調和する「文芸映画」の最高峰。ディレクターズ・カット版とも言える、本来の姿でスクリーンに蘇る。
© Madragoa Filmes, Gemini Films, Light Night
『夜顔』
2006年/ポルトガル、フランス/フランス語/ヨーロッパ・ビスタ/69分/原題:Belle Toujours
監督・脚本:マノエル・ド・オリヴェイラ/撮影:サビーヌ・ランスラン/製作:ミゲル・カディリェ
出演:ビュル・オジエ、ミシェル・ピコリ
ルイス・ブニュエル監督作『昼顔』(1967)の登場人物たちの38年後を描く。ミシェル・ピコリが再び「アンリ」役で登場。カトリーヌ・ドヌーヴが演じた「セヴリーヌ」にはビュル・オジエが扮する。
© Filbox Produções, Les Films d’ici