堀田真由の過去の出演作を調べるために、フジテレビヤングシナリオ大賞に輝いた脚本を単発ドラマ化した『サロガシー』(2021)を見た。見応えある作品だった。
本作は代理母出産を題材に、家族の在り方や社会の価値観を問いかける意欲作だ。江島環(堀田真由)が建築士として働いているが、同性愛者の兄・江島聡(細田善彦)のために代理母出産を決意する。
物語は、環が両親に「お兄ちゃんの子」を妊娠したと報告する場面から一気に緊張感を増す。父・江島忠(井上肇)は衝撃を受け、兄を殴ろうとする。その勢いで聡は自分がゲイであることを両親に告白する。母・江島彰子(宮田早苗)は環に対して「あなたは子供を産むツールじゃない」と強く非難する。家族の反発は激しく、特に母は環を否定するような言動を繰り返し、環との間に埋めがたい溝ができている。
環の職場でも彼女は苦闘する。男社会の建築業界で働く環は、上司の神谷晃(斎藤工)らと対立しながらも、自身の信念を貫こうとする。そんな環を支えるのが同僚の野池幸四郎(田村健太郎)であり、彼の存在が環の孤独を和らげる。
父の忠は環に、どうして自分を犠牲にする必要があるんだと訪ねる。普通の幸せを求めないとのかと。環は、自分は結婚せずに仕事に生きようと思っている。女に生まれたことを悔しく思う時がある(特に仕事で差別的な扱いをされた時)。でも、女性として、母になることや出産の喜びを捨ててしまったわけではないことに葛藤しているのだ。環が切迫早産で倒れ、緊急入院した時には、彼女の身体的負担や精神的葛藤がピークに達し、兄・聡や両親との関係もまた大きく揺れ動く。
身体を痛めながら赤ん坊を生む環。兄カップルに引き渡した後も未練を残しているように見える。しかし、環は最終的には自分の決断を前向きに捉え直し、自分の人生を生きる決意を固める。
堀田真由が揺れ動く主人公を見事なリアリティで演じている。自分は頑張って仕事に行きたい。母のように家庭に尽くすような生き方は嫌だと反発する気持ちもあるが、子どもを生んだことで母の気持ちもわかるようになっていく。
4人の家族の葛藤が45分の時間に丁寧に描かれていて、シナリオ作家の力を感じる作品だった。