今、映画館でスマッシュヒットとなっている『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』は、確かに面白い映画である。
この映画のどこが受けているかというと、やっぱり全盛期の香港アクション映画の良さを押し出した格闘シーンなどにあると思う。アクション監督が谷垣健治、音楽が川井憲次と日本人スタッフが関与しているは、中身が完璧に香港映画だ。確かに昔懐かしい雰囲気がある。
本作が舞台にしているのは、かつて東洋の魔窟と呼ばれた九龍城砦。アジアのエキゾチックなカオスさを象徴するそのエリアを舞台にところ狭しと(本当に中が狭い)と、縦横無尽のアクションを繰り広げる。
主人公は密入者の陳洛軍(チャン・ロッグワン)。希望を持って香港にやってきたが、裏社会の人間ともめてしまい、逃げるように九龍城砦へ。そこを仕切る親父に面倒を持ち込むなとぶっ飛ばされたりしながらも、懐の深さを発揮されて、九龍城砦で生活することを認められる。
アクションもいいのだが、本作はこの生活描写がいい。今は亡き九龍城砦の内部をセットで再現し、狭い建物内に無秩序に並ぶ店や居住スペースで、人々がエネルギッシュに生活している。とにかく、この熱気がいいのだ。この中では、こういう食べ物を食べていたのか~とか、そんな風に集まってテレビ見て盛り上がったりしていたのか~とか、人々の地に足の着いた生活感がすごい出ている。九龍城砦のホームドラマを観ているような気分にもなれる。
ここに集まる人たちは、たいてい訳ありで、その分よそ者も暖かく迎え入れる。貧しい人々、はみだし者たちの人情で成立している世界として描かれている。
この九龍城砦は、80年代には取り壊されることが決定し、90年代初頭に取り壊しが始まる。作中でももうすぐここは無くなると言うようなことが言われている。しかし、男たちはそれでもここを大切な場所として戦うのが熱い。まさにタイトル通り「黄昏の戦士たち」だ。
80年代は、香港が一番元気だった時代。その頃に対する郷愁がいっぱい詰まった作品で、当時の香港映画らしさも存分に堪能できる。
原作小説も日本で出版されるらしい。映画のアクション要素はおそらく映画制作陣による脚色じゃないかと思うが、この地での生活感を追体験できる内容になっていることを期待している。
早川書房は、話題沸騰の香港映画『トワイライト・ウォリアーズ 決戦! 九龍城砦』の原作小説・余兒(@YUYI_0120)先生の『九龍城寨』3部作の版権を取得しました! 発売時期などの詳細は続報をお待ち下さい! #トワイライト・ウォリアーズ #九龍城寨之圍城 #九龍城砦に集え pic.twitter.com/zHcc7XYXLh
— 早川書房公式 (@Hayakawashobo) February 17, 2025
この映画や最近話題のマンガ『九龍ジェネリックロマンス』などで、ひそかに九龍ブーム来てるのかもしれない。『九龍ジェネリックロマンス』も実写映画になるのだが、この作品と生活感描写を比較されてしまうのは、なかなか酷だなあ。