テレビドラマ『119 エマージェンシーコール』第6話「夜の闇、人の心、命の声」は、緊迫した司令センターの業務の中で、対応する管制員たちの成長や葛藤が描かれるエピソードだった。テーマは「慢心の危うさ」だ。
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物語は、粕原雪(清野菜名)が過去に火事の際に司令員の声に救われた経験から、この職業を選んだことが明かされる。彼女の姉・小夏(蓮佛美沙子)は、妹の選択に複雑な表情を見せるが、その理由は後半で明らかになる。
今回のエピソードの中心人物となるのは、新たに管制センターに配属された上杉昴(酒井大成)。彼は現場経験が豊富で、自信に満ちた態度を見せるが、兼下睦夫(瀬戸康史)は彼の対応に疑問を呈する。上杉は、無駄と思えるコールに苛立ちを覚え、感情を露わにする。エピソード中盤では、粕原が自殺をほのめかす女性の対応を行う場面が印象的だ。彼女は単に必要事項を聞き取るのではなく、相手の話に耳を傾け、心のケアをしながら冷静に対応する。その様子を見た上杉は「これって消防の仕事なんすか?」と疑問を抱くが、与呉心之介(一ノ瀬颯)の「聴取に絶対的な正解はない」というが、そんなふわっとしたことで現場を出動させているのかとさらに苛立ちを募らせる。
後半では、緊急性の高い事件が発生する。刺傷事件の通報を受けた上杉は動揺するが、ベテランの堂島信一(佐藤浩市)が冷静に状況を整理し、見事な判断で警察と連携する。これを目の当たりにした上杉は、自身の未熟さを痛感し、堂島から「人間は100人いれば100通りの考えがある。完璧に対応できるなんて思い上がりだ」と厳しく諭される。
ラストのクライマックスでは、粕原が陣痛が始まった妊婦の夫からの緊急コールを受ける。救急車が到着する前に車内で出産する可能性が高い状況で、粕原は電話越しに冷静な指示を出し、無事に赤ちゃんを誕生させる。緊迫感のあるシーンの中で、赤ちゃんの泣き声が聞こえた瞬間は、感動的な場面だった。声しか聞こえないからこその緊迫感がみなぎる場面になっていた。
兼下は「この仕事で一番怖いのは慢心だ」だと粕原に言う。人の命を預かる仕事だからなおさらだが、どんな仕事でも慣れてきた頃が一番危ない。慢心してないつもりでも、どこかで余裕が生まれてその隙に慢心が生まれることがあるものだ。
そんな慢心の他、今回は粕原の姉が声を出せない症状になっていることが描かれていた。彼女がその症状を患った理由はこれから描かれることになると思うが、声だけで現場の状況を的確に判断しなければならない粕原のような管制員が、声を出せない人の通報に直面したら、どうなるのか、そこにこのドラマの山場が来そうだ。
恒例の声優ゲストは今回は『ダンダダン』などで知られる若山詩音。自称元彼の男に殴られて逃げている10代の女性役だ。『ダンダダン』のモモっぽい芝居をしていた。それと、救急車に乗らないのにしょっちゅうコールしてくる困りものの「みそたつ」こと頻回要請者を演じていたのは、「ダーウィンが来た」のヒゲじいなどでお馴染みの龍田直樹だと思われる。
登場人物
粕原雪(清野菜名)
高千穂(中村ゆり)
兼下睦夫(瀬戸康史)
新島紗良(見上 愛)
与呉心之介(一ノ瀬颯)
箕輪健介(前原滉)
上杉 昴(酒井大成)
田中 悠(三浦獠太)
粕原小夏(蓮佛 美沙子)
粕原春香(堀内敬子)
粕原 銀(遠山俊也)
高千穂一葉(中村ゆり)
堂島信一(佐藤浩市)