カリフォルニア州では、映画やテレビの製作が他州や海外へと流出する現象が深刻化している。こうした状況を食い止めるため、ショーランナーのジュリー・プレック氏と映画監督のサラ・アディナ・スミス氏が発起人となり、「Stay in L.A.」嘆願書を作成。ロサンゼルスでの映画・テレビ製作を維持するための10の施策を提案した。それに伴い両者はハリウッド・リポーターに嘆願書に関するコラム「ハリウッドはどうすれば映画製作の撤退を食い止められるか?」を掲載している。その概要は以下の通りだ。
ハリウッド映画・テレビ業界の危機
新型コロナウイルスのパンデミックやストライキ、不況を乗り越え、2025年を迎えた映画業界。しかし、ロサンゼルスの映画・テレビ製作の現場は以前にも増して厳しい状況にある。製作現場の減少は、脚本家や俳優、技術者、制作アシスタントといった映画制作に関わるすべての職業に影響を及ぼしている。
ハリウッドは単なる地理的な場所ではなく、「夢」を象徴する存在だ。しかし、製作が他州や海外へ流出し続ければ、ロサンゼルスは単なる役員室とプレミアパーティーが開かれる街に成り下がってしまう。これを防ぐために、実現可能な対策を講じる必要がある。
10の具体的な施策
「Stay in L.A.」の嘆願書では、ロサンゼルスを再び映画製作の拠点とするために、以下の10の施策を提案している。
1:奨励金の引き上げ
ギャビン・ニューサム州知事の7億5,000万ドルの奨励金予算の上限を引き上げる。ロサンゼルス郡における奨励金の上限を3年間一時的に撤廃。
2:インセンティブの重要性を周知
州議員に対し、映画・テレビ業界へのインセンティブが単なる「企業優遇」ではなく、雇用創出のためであることを啓発する。業界の失業率が12.5%に達していることを考慮し、適切な対策を講じる。
3:税制優遇措置の拡充
映画・テレビ製作に対する税額控除を30%に引き上げる。1,000万ドル以下の映画にはさらに5%の税額控除を追加し、インディペンデント映画の撮影を促進。
4:ポストプロダクション支援の強化
州内での撮影を条件としないポストプロダクションへの資金提供を行う。映画やテレビ音楽の制作にも同様の支援を適用。
5:短編映像制作の促進
CMやミュージックビデオの制作も減少しているため、これらの製作を支援するプログラムを実施。
6:撮影許可の緩和と費用削減
L.A.の屋外や公共スペースでの撮影制限を撤廃。FilmLAの申請手続きを簡素化し、許可料を一時的に減額。
7:ロケ地提供の奨励
地域住民と協力し、撮影に適した住宅地や商業施設を開放。参加者に固定資産税の割引を提供。
8:未利用地の活用
市や郡が未利用地を映画製作の「ベースキャンプ」として提供。これらのエリアを活用するための地図を作成。
9:ロケーションコストの抑制
ロケ地使用料に一時的な上限を設け、プロダクションの負担を軽減。スタジオ・制作会社の協力スタジオや制作会社に対し、ロサンゼルス郡での撮影を増やすよう働きかける。
10:火災後の復興に貢献するためのコミットメントを求める。
「Stay in L.A.」嘆願書の発表以降、多くの関係者がこの動きに賛同している。一方で、「すでに手遅れではないか」との声もある。しかし、L.A.を映画製作の拠点として守るために、企業、労働組合、映画制作者が協力することが不可欠だ。
この動きは単なる雇用創出にとどまらず、ロサンゼルスという街のアイデンティティを守ることにもつながる。「映画製作は雇用を生み出し、ビジネスを成長させ、希望と自信を育む」。ハリウッドの未来を守るため、今こそ行動が求められている、としている。
嘆願書への署名は「stayinla.org」から可能だ。