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経済苦境のハリウッドを襲った山火事:苦境を乗り越えるため労働者たちが連帯し始める


コロナパンデミックにストライキと、数年間に渡り大きな経済ダメージを受け、混乱の渦中にあるハリウッド。そこへ今度は大規模な山火事が襲い、さらなる苦境に見舞われている。この山火事の影響が長期にわたるか不透明だが、ハリウッドに将来の見通しに対して不安が募っているのは、間違いない。

そんな中、Deadlineが、ハリウッドの復興に向けて動き出す人々を紹介している。
 

ハリウッド労働者、山火事を契機に結束――経済的混乱からの復興へ

ロサンゼルスのイートン・キャニオンで1月7日の夜に発生した山火事が、ハリウッドの労働者たちに新たな結束をもたらしている。経済的混乱に直面する彼らは、壊滅的な災害を契機に、互いを支援するための集団行動に乗り出した。

山火事の被害と経済的打撃

映画監督・脚本家のセリーナ・コバルビアスは、自宅で誕生日ケーキを焼いていた際に停電に見舞われた。まもなく携帯電話もつながらなくなり、事態を把握する手段を失った。「何が起きているのか分からなかったが、すぐに避難しなければならないと直感しました」と彼女は語る。幸運にも、近隣のボランティアが消防車を誘導したおかげで、彼女の家は奇跡的に焼失を免れた。

しかし、この山火事によってロサンゼルス郡では4万エーカー以上が焼失し、経済的損失は600億ドル以上に達した。2024年は、ハリウッドが映画・テレビ業界の回復を期待していた矢先の悲劇的な幕開けとなった。

「仕事が戻り始めたところだった。自分の映画のプロモーションをするはずだったのに、今は生活を立て直すことに追われている」とコバルビアスは嘆く。

労働者による支援活動

火災直後から、エンターテインメント業界は被災者支援に乗り出した。スタジオやセレブリティ、労働組合が救済基金に寄付を行い、特に業界労働者自身の支援の輪が広がった。

元WGA理事のリズ・アルパーは、家を失ったクルーのための200以上のGoFundMeページを作成し、寄付を呼びかけた。「ハリウッドのクルーたちは過去数年間、多くの犠牲を払ってきた。ストライキを経験し、もうこれ以上失う余裕がない人々が多い。だからこそ、助け合うことが必要だった」と語る。

発表時点で、多くの募金活動が目標額の半分以上を達成し、数十万ドルが集まっている。被災者の一人であるIATSEローカル700のロビン・ミゲルは、「この家が私たち家族をつなぎとめる接着剤だった」と語りつつ、寄せられた支援の大きさに驚いている。労働者たちは経済支援だけでなく、仕事探しや装備の提供など、あらゆる手段で仲間を助けている。

長引く業界の苦境と未来への模索

ハリウッドの労働者たちは、パンデミックやストライキによる打撃から未だ回復できていない。FilmLAの報告によると、2024年のロサンゼルスでの制作数は過去5年平均より30%以上減少している。業界では「2025年まで生き延びる」ことが合言葉となり、新年が救済の年になることを期待していた矢先の山火事だった。

火災の影響で撮影日数は一時的に50%減少し、許可申請も激減した。FilmLAのフィリップ・ソコロスキー副社長は「カリフォルニアの映画制作を支える人々にとって非常に厳しい時期だ」と述べる。

業界全体での復興支援

労働者たちは、政府の補助金や保険金を待つのではなく、自ら行動を起こしている。衣装デザイナー組合(IATSEローカル892)は衣料品の寄付を募り、3日間のチャリティセールで4万ドル以上を集めた。また、チームスターズ・ローカル399のルイス・ダーゲンジオは、自身の会社Zelloを配送センターとして開放し、被災者に家具を提供している。

「ビジネスは後で立ち上げることができる。今は地域社会が私たちを必要としている」とダーゲンジオは語る。

また、著名人たちが賛同する「Stay in LA」キャンペーンも発足し、映画制作の州外流出を防ぐ動きが加速している。さらに、ウィル・ロジャース映画パイオニア基金やアネンバーグ基金などの支援団体が資金援助を行い、慈善コンサート「ファイヤーエイド」では1億ドルの寄付が集まった。

未来への希望

カリフォルニア州は映画・テレビ税額控除を年間約7億5000万ドルに増額する計画を発表しており、今後の業界回復に向けた取り組みが進んでいる。

しかし、被災した労働者にとって、復興の道のりは長い。家を失ったミゲルは、「私たちの家を子供たちに残したかった。しかし、今は何もない」と語る。

それでも、ハリウッドの労働者たちは結束を強め、互いを支え合いながら前進しようとしている。彼らは、厳しい現実に直面しながらも、希望を捨てていない。

 
「Stay in LA」については、別の記事で紹介した。こちらも合わせ読んでほしい。
映画業界のロサンゼルス離れ:ハリウッド復興のための嘆願書をショーランナーと映画監督が公開、賛同を求める – Film Goes with Net