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【ネタバレ】「東京サラダボウル」感動の最終回:阿川とボランティアの決着、そして多人種共生社会への課題と希望


NHKドラマ10、『東京サラダボウル』の最終話が放送された。どのように阿川(三上博史)やボランティア(絃瀬聡一)にどう決着をつけるのか、注目していた。そして、このドラマのテーマ、外国人との共生社会という難しいテーマをどう着地させるのか。

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阿川とボランティアの関係

冒頭、鴻田の自宅に招かれた有木野は、彼女が用意した大きめの部屋着を手にする。この何気ないシーンは、彼らの関係の距離感がよくわかるやり取りだ。

過去に織田覚(中村蒼)と交際していたことを明かした有木野。どうして織田の罪を被ったのかと問う鴻田に対し、有木野は「疑いの目が自分に向けばよかった」と語る。これは彼が抱えてきた後悔と贖罪の思いを映し出している。最後まで織田を信じきれなかったアリキーノの心の傷は深い。彼はゲイゆえに結婚などの人生の展望が持てないから、せめて警察組織の中では上手くやっていきたかったというのも、背景要因だ。警察組織は、男社会で同性愛者には厳しい目が向けられるということだろう。

鴻田は、織田の過去を探る中で、阿川博也(三上博史)織田が亡くなる10日前に行った取り調べの記録が失われている可能性を考え、彼の妹を訪ねる。そこから見つかったのは、織田が大切にしていたジッポライター。その中には、決定的な証拠となるSDカードが隠されていた。

SDカードに残されていた映像は、阿川が犯罪組織「ボランティア」とつながっていた証拠だった。中国人女性が阿川に「(ボランティア)に何人売ったのか?」と問い詰める様子が記録されていたのだ。これにより、阿川が不法滞在者を犯罪組織に売り渡していたことが明るみに出る。鴻田は阿川に罪を認めるよう迫り、ついに彼は観念する。

阿川は鴻田に置き手紙を残し、自らの罪を告白する。しかし、彼は最後にボランティアを捕まえるため、一人で彼らと対峙する道を選ぶ。その場に駆けつけた鴻田だったが、阿川はボランティアに喉を切られ、瀕死の状態に陥る。鴻田の必死の応急処置により、阿川は一命を取り留める。なんと、鴻田は阿川の傷口に手を入れて、直接動脈をつまんで止血したらしい。瀕死で助かる見込みはない怪我だったが、奇跡的に助かった。

最終盤では、ボランティアの取り締まりが進むが、組織は国際的なネットワークを持ち、一筋縄ではいかないことが示唆される。それでも、アリキーノは「どこに何人いても、探し続けるだけだ」と決意を語る。

結末として、アリキーノはもう少し通訳人を続けることを決め、織田の墓前でその意思を告げる。一方、鴻田は本庁への異動を決断。彼らの捜査は終わらず、まだ続いていくのだ。

概ね原作マンガと同じ終わり方だが、主人公の2人がよりはっきりと今後も戦い続けることを強く決意させるような締め方になっていた。

 

多人種共生の難しさを希望

本作は現代社会にとって重要なテーマを持った作品だった。町を歩けば、東京においては外国人を見かけない日はない、旅行客だけではない、いろいろな国の出身者がすでにこの国で生活して、働いている。彼らはこの国の一部であって、必要不可欠な存在になりつつある。それに伴い、東京の景色も変化している。その変化が特に顕著な新大久保や歌舞伎町がよく出てくるのが、本作の魅力となっており、テーマのリアリティが補強されていた。

鴻田の快活なキャラクターも良かった。刑事としては異色であるが、そんな刑事がいてもいいかなと思える人物だった。こぼれカス担当と言われることに嫌だと思わないその性格。こぼれた人を救えることに誇りを持つその信念がさわやかで良かった。

外国出身者の生活感が出ているのも良かった。こういう風にいろいろな言語や外国出身者が当たり前のように出てくる作品が、もっと増えるといいなと思う。それこそ、重たいテーマを背負うのではなく、普通に出てくる作品ももっと増えて欲しい。

日本の社会情勢は今、決して外国出身者に優しいとは言えない状況だと思う。この作品が少しでも広まることで、そんな空気を少しでも変えられるにではと思えた作品だった。

東京サラダボウル ー国際捜査事件簿ー(1) (パルシィコミックス)

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登場人物
鴻田麻里(奈緒)
有木野了(松田龍平)
織田覚(中村蒼)
阿川博也(三上博史)
杓野玲央(中川大輔)
豊角行広(三浦誠己)
八柳隆太(阿部進之介)
今井もみじ(武田玲奈)
ボランティア(絃瀬聡一)
張柏傑(朝井大智)
飯山修(皆川猿時)
伊村美鈴(安藤玉恵)
黒須雄介(関口メンディー)
広田カナ(ノムラフッソ)
清宮百合(イモトアヤコ)
太良尾保(平原テツ)