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Amazon Prime Video、AI吹き替えを試験導入。スペイン語と英語で12作品から


Amazonの動画配信サービス「Prime Video」は、AI技術を活用した映画やシリーズの吹き替えを試験的に導入したと公式ブログで発表した。このプログラムでは、選定された映画やシリーズを英語およびラテンアメリカ向けのスペイン語に吹き替える。

Prime Videoは3月5日、公式ブログで「ストリーミングライブラリをより多くの視聴者に届けるための試み」として、このプログラムの導入を発表した。今回AIを活用した吹き替えが施されるのは、これまで吹き替えが提供されていなかったライセンス作品であり、「El Cid: La Leyenda」「Mi Mamá Lora」「Long Lost」など12作品が対象となる。

Prime VideoとAmazon MGM Studiosの技術担当副社長であるラフ・ソルタノヴィッチ氏は、「Prime Videoでは、AI技術を実用的かつ有益な形で活用し、視聴体験を向上させることを重視している。AIを活用した吹き替えは、従来吹き替えが提供されていなかった作品に限られ、シリーズや映画をより多くの視聴者に楽しんでもらうための新たな試みだ」と述べる。

近年、ストリーミングサービスでは国境を越えて人気を博す作品が増えており、Netflixの「イカゲーム」の成功がその代表例だ。これに伴い、吹き替えや字幕に対する需要も拡大している。Deadlineは、Netflixの昨年の報告によると、韓国のバラエティ番組の視聴時間の40%以上が吹き替え版によるものであり、特にブラジルやメキシコ、ラテンアメリカ、EMEA(欧州・中東・アフリカ)地域では字幕よりも吹き替えを好む傾向が見られるとしている。

Prime Videoの今回の発表では、具体的な地域別のデータには言及されていないが、今回の試験プログラムは「ハイブリッドアプローチ」として展開される。AI技術と人間のローカライゼーション専門家を組み合わせることで、品質の管理を図る。「適切な人間の専門知識を組み合わせることで、これまで視聴者に届けることが難しかった作品のローカライズが可能になる」とブログでは説明されている。

クリエイティブおよび制作面でAIを活用することは文化や言語の壁を超える手段となる一方で、慎重な対応が求められる。例えば、映画『The Brutalist』の制作チームが、ハンガリー語のセリフの修正にAIを使用したことにより、アカデミー賞の選考に影響を及ぼす可能性があるとの懸念が生じた。しかし、家庭での視聴環境においては、AIを活用した吹き替え技術が番組の発見や視聴体験の向上に貢献するという期待もある。

YouTubeやSNSでも吹き替え技術の進化が進んでいる。昨年、YouTubeはAIを活用した吹き替えツールを導入し、動画コンテンツのグローバル展開を支援する取り組みを開始した。Metaも同様に、リール動画の吹き替えやリップシンク技術を向上させる計画を発表している。