『それでも俺は、妻としたい』第9話「人は結果を出さなければならないときがある」は、結果を出さないといけない柳田豪太(風間俊介)のあせりと逡巡を描く回であり、息子の太郎(嶋田鉄太)の成長と変化が描かれる回だ。
前回、妻・チカ(MEGUMI)に「結果を出せ」と迫られた豪太(風間俊介)は、その言葉を受け止めきれずにいる。妻の態度は冷たくなり、許されたのかどうかすら分からない。そんな中で、豪太は自らの立場を自覚し、変わらざるを得ない状況に追い込まれていく。
子ども食堂では、奥さん仲間たちから「結果を出せと言われるなんて、まだ期待されている証拠だ」と言われるが、それすらも皮肉めいて聞こえる。彼女たちから見れば、ヘラヘラしている豪太は「キモい」存在だ。今のところ、彼には誇れるものが何もない。唯一の救いは、息子・太郎(嶋田鉄太)との仲が良いことだろう。とはいえ、それも精神年齢が近いからではないかと思わせる描写が続く。

本作の特徴である手持ちカメラの演出が、今回もリアルな家族の姿を捉えている。人物に寄り添い、揺れながら追うカメラワークは、視聴者にその場にいるような感覚を与える。舞台となるマンションの部屋が狭いこともあるだろうが、臨場感ある夫婦生活を生々しく伝えることに成功している。
そんな中、太郎は学校へ行き、「お笑い係」に選ばれる。これは彼にとって大きな前進だ。しかし、豪太は「自分が結果を出していない」という事実に囚われ、その喜びを純粋に噛み締めることができない。学校の面談では、太郎が全校集会でコントを披露することが決まったと聞かされる。しかし、豪太はすぐにネガティブなことを言い始める。彼の性格がよく表れた場面だ。

とりあえず豪太は太郎を褒めまくるが、それはそれでプレッシャーになるとチカにたしなめられる。しかし、太郎から「一緒にお笑いネタを考えよう」と誘われ、豪太は張り切る。しかし、何も浮かばない。小学生向けなら適当でいいだろうと都合の良い考えに走るが、それでは意味がない。試行錯誤の末、豪太は旗揚げゲームを使ったネタを考案。最初は太郎とチカが挑戦し、その後、チカと豪太が対決。負けたチカが変顔をすることで場が和み、結果的に家族の雰囲気は良くなった、ように見え、チカも豪太を許したのかように思えた。
しかし、当然そんなことはない。夜になり、豪太は「太郎の成長が一番嬉しい」と語るが、チカは「それで自分が結果を出さなくていい理由にはならない」と鋭く指摘する。「お前が結果を出さないと、夫婦関係がどうなるかわからない」と釘を刺され、豪太は絶望的な表情を浮かべる。その長回しの演出が秀逸だ。そして、豪太はあるアイデアを思いつく。
次回、そのアイデアが明らかになるようだ。果たして豪太は「結果」を出せるのか。

しかし、風間俊介の情けない男の演技が絶妙だ。ヘラヘラ顔が良い。本当にヘラヘラしているんだけど、絶妙に憎めない感じがある。チカがどうしてこの男と曲りなりにも長く夫婦でいるのか、その絶妙な憎めない感じがあるからだろうという説得力がある。