宝塚歌劇団が7月から法人化され、「株式会社宝塚歌劇団」として新たなスタートを切ることが明らかになった。11日、宝塚市内で取材に応じた村上浩爾理事長は、歌劇団の改善に向けた取り組みについて言及した。
村上理事長は法人化の意義について「会社法に基づいて、ガバナンス体制の強化、組織の透明性、意思決定の客観性、やはりそういった意味合いが一番強いと思います」と明言した。さらに「これまでと違って、株式会社としてしっかりと運営していくというのが、最大の目的になると考えております」と説明した。
新会社名については「株式会社宝塚歌劇団」とすることを決定。村上理事長は「やはりこれだけ長く親しんでいただいてきた劇団名ですので」と、伝統ある名称を継承する理由を述べた。
また、全423人のタカラジェンヌのうち、専科13人と5年目までの189人を除く221人(3月11日現在)と、3月1日付で雇用契約を結んだことも発表された。村上理事長は「労働時間管理をきちんとやるべきだという指摘を受けておりまして、勤怠管理についてもしっかり行い、時間外労働についても明確にして支払っていく」と労務管理の改善方針を示した。
今回の法人化は、令和5年9月に所属劇団員が急死した問題を受け、親会社の阪急阪神ホールディングス(HD)が決定したものである。鉄道、不動産、エンターテインメントと業種が多岐にわたる同社では、事業ごとに専門性の高い経営判断が求められており、歌劇団を阪急電鉄の一部門と位置づける現体制では管理責任を十分果たせないと判断したものとみられる。
阪急阪神HDの幹部は過去に「われわれが歌劇団の運営に口をはさむことは簡単ではなかった」と述べたことがある。プロの役者集団である歌劇団の運営に、全く分野が異なる電鉄幹部が影響力を及ぼすことの難しさを示唆するものであった。
今回の法人化では取締役の過半数を社外出身者とすることで、歌劇団の運営に客観的な視点からの助言が期待される。また取締役会と歌劇団との間で強い緊張感が生まれることも予想され、ガバナンスの強化につながると考えられる。
阪急阪神HDは現在、営業利益の約9割を都市交通、不動産、エンターテインメントの3事業が占めているが、各分野とも他社との競争が激化しており、迅速で専門性の高い経営が求められているという背景もある。
一方で、阪急阪神HDは昨年4月にリスクマネジメントの専門部署を立ち上げるなど、歌劇団への直接的な関与を深める動きもあった。法人化が安易な組織の切り離しにならないよう、歌劇団の経営を軌道に乗せる責任が阪急阪神HDには引き続き求められている。