TBSが所蔵する貴重なフィルムをデジタル修復し、劇場公開する「TBSレトロスペクティブ映画祭」の第2回が開催されることが決定した。今回は、日本の映像史に独自の足跡を残した実相寺昭雄の特集となる。

特撮作品『ウルトラマン』やATG映画、CM、オペラなど幅広いジャンルで活躍した実相寺。クールで独自の美学を貫いた印象が強いが、20代の若手ディレクター時代は作品ごとに異なる演出スタイルを模索し、試行錯誤を繰り返していた。今回の特集では、その“青の時代”に制作されたドラマ、音楽番組、ドキュメンタリーの計8作品を60年の時を経てスクリーンに甦らせる。
「TBSレトロスペクティブ映画祭」を企画・プロデュースする佐井大紀氏は、「テレビというメディアのあり方が問われる今だからこそ、その黎明期に息づいていた『ものづくりへの熱量』を振り返ることに意味がある」と語る。昨年の第1回・寺山修司特集は大きな反響を呼んだが、今回の実相寺特集も映像ファンにとって貴重な機会となるだろう。
上映作品には、実相寺が初めてドラマ演出を手掛けた『おかあさん』の「あなたを呼ぶ声」(脚本・大島渚)、特撮の神様・円谷英二に迫ったドキュメンタリー『現代の主役』「ウルトラQのおやじ」など、テレビ創成期の熱気を伝える名作が並ぶ。また、実相寺作品と共に、佐井監督によるドキュメンタリー『日の丸~寺山修司40年目の挑発~』や『方舟にのって~イエスの方舟 45年目の真実~』も特別上映される。
本映画祭は、5月2日より東京・Morc阿佐ヶ谷を皮切りに全国順次公開。スケジュールは公式サイトで確認してほしい。
上映作品
■『おかあさん』
母親を主題にした1話完結のスタジオドラマのシリーズ。
第178話「あなたを呼ぶ声」(デジタル修復版) (1962年6月14日放送)
脚本・大島渚。25歳の実相寺による記念すべきドラマ初演出作品
第184 話「生きる」(デジタル修復版) (1962年8月2日放送)
後の実相寺組常連が集結、セット撮影の技巧が光るドタバタコメディ
・第190 話「あつまり」(デジタル修復版) (1962年9月13日放送)
鳴り響くジャズと躍動的な映像で時代を切り取った、和製ヌーヴェル・ヴァーグ
第207 話「鏡の中の鏡」(デジタル修復版) (1963年1月10日放送)
美術や画面構図を駆使して観念を表現する、実相寺アングルの原点
第212 話「さらばルイジアナ」(デジタル修復版) (1963年2月14日放送)
主演・原知佐子。目元、口元、オペラ…実相寺演出が炸裂する鮮烈な人間ドラマ
第236 話「汗」(デジタル修復版) (1963年8月8日放送)
音楽番組風のセットで臨んだ、姉妹の強烈な愛憎劇
■『7時にあいまショー』「坂本九ショー」(HD リマスター版) (1963年6月8日放送)
ドラマ風の演出で魅せる、TBS に残る最古の坂本九出演の音楽番組
■『現代の主役』「ウルトラQ のおやじ」(HD リマスター版) (1966 年6月2日放送)
特撮の神様・円谷英二の真髄に迫った伝説のドキュメンタリー
その他、企画・プロデュースする佐井大紀氏のドキュメンタリー作品も上映される。
・「日の丸~寺山修司40年目の挑発~」
・「方舟にのって~イエスの方舟45年目の真実~」