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【2024年 欧州動画市場トレンド】ストリーミング躍進の裏で有料テレビは?スペイン・イタリア・ポーランドの最新動向


欧州の動画エンターテインメント市場は急速に変化しており、地域全体で成長が続いている。特にストリーミングサービスは主要市場で大きくシェアを拡大している。英調査会社Futuresource Consultingが発表した最新の報告書によると、スペイン、イタリア、ポーランドの動画市場において、従来の有料テレビ(Pay-TV)と直接契約型の定額制動画配信サービス(SVoD)が共存しながら、デジタル化が進んでいるという。

ストリーミングの躍進

「スペインとイタリアではストリーミング収益が急増している」と、Futuresource Consultingのリサーチアナリスト、レイチェル・ミッチェル氏は指摘する。2024年、スペインのストリーミング収益は前年比16%増、イタリアも14%増と力強い成長を記録した。これには、現地コンテンツへの投資拡大、戦略的な価格調整、大手プラットフォーム(NetflixやDisney+など)の広告付きサブスクリプションプランの導入が影響しているという。

ポーランドでもストリーミング市場は引き続き成長しており、2024年は12%の2桁成長を達成した。しかし、2028年までの成長率は年間3%程度とやや鈍化すると見込まれる。現在、ポーランドの家庭における動画配信サービスの契約数は平均2.1件で、イタリア(2.2件)、スペイン(2.4件)に次ぐ水準となっている。ポーランドでは新規加入者が慎重にサービスを選択する傾向があり、複数のサービスを契約する割合は横ばいとなっている。

映画興行と都度課金型の動画市場に試練

スペインとイタリアでは、パンデミック後の映画興行が好調だったが、2024年は成長が鈍化し、一部市場では横ばいまたは減少傾向が見られた。これにより、都度課金型の動画市場(Transactional Video on Demand、TVoD)にも影響が及んでいる。特に、小売流通が停滞する地域では伸び悩みが続く。

一方、ポーランドではAmazonの都度課金型ストアの開始が市場を押し上げ、電子販売(Electronic Sell-Through、EST)およびTVoDの成長を後押しした。この傾向は今後数年続くと予想される。

短期的には、2025年の映画公開ラインナップの充実が期待されており、映画興行市場とデジタル配信市場の双方が再び活性化する見込みだ。

有料テレビの存在感、依然として強固

「ストリーミングが台頭する中でも、有料テレビは依然として消費者のエンターテインメント支出の中核を占めている」と、Futuresource Consultingの主任市場アナリスト、アナスタシア・ブダッシュ氏は指摘する。

特にポーランドでは有料テレビの世帯普及率が69%に達し、市場全体の収益の60%を占めている。これはテレビ視聴の文化が根強いことに加え、コードカッティング(ケーブルテレビの解約)を抑制するための市場戦略が奏功しているためだ。

スペインとイタリアでは、有料テレビの市場シェアはそれぞれ47%、44%とやや低いものの、依然として重要な地位を維持している。これには、有料テレビとSVoDのバンドル契約が普及していることが寄与している。

欧州のエンターテインメント市場は国や地域によって異なるペースで進化しているが、共通するトレンドも多い。市場のパターンや変化の細かなニュアンスを理解することで、業界関係者は新たなビジネスチャンスをつかむことができると、Futuresource Consultingは結論づけた。