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ドキュメンタリー映画『Facing War』世界初上映:CPH:DOXでストルテンベルグ元NATO事務総長が語る、ウクライナ、トランプ、そしてヨーロッパの危機


コペンハーゲンで開催される世界的なドキュメンタリー映画祭「CPH:DOX」が開幕し、時宜を得た作品が世界初上映された。

上映されたのは、トミー・グリクセン監督による『Facing War』。本作は、イェンス・ストルテンベルグ元NATO事務総長がロシアによるウクライナ侵攻や、NATOに懐疑的なドナルド・トランプ氏の米大統領再選の可能性と向き合った最後の数年間を描く。上映にはストルテンベルグ氏に加え、デンマークのメッテ・フレデリクセン首相も出席し、その重要性を示した。

ストルテンベルグ氏は昨年10月にNATO事務総長を退任したが、ロシアの脅威に対抗しNATOを強化しようとした努力が、トランプ政権の下で揺らぎつつある。上映会は、米国がNATO欧州連合軍最高司令官に四つ星の米軍将官を任命する慣例を見直す可能性があるとの報道が流れる中で行われた。

質疑応答でその点について問われたストルテンベルグ氏は、「報道が事実かどうかは分からないが、米国が欧州への関与を減らす可能性は考慮すべきだ。実際にトランプ前大統領は前回の在任時にもそうした方針を打ち出していた。米国は欧州の負担が小さすぎると感じており、自国の負担が大きすぎると考えている」と語った。

『Facing War』では、ストルテンベルグ氏がNATO事務総長として一貫してウクライナ支援を訴えてきた姿が映し出される。彼はウクライナのNATO加盟を支持する姿勢を示してきたが、先月、米国のピート・ヘグセス国防長官はウクライナのNATO加盟を否定する発言をした。

この点について問われたストルテンベルグ氏は、「1、2年前にはウクライナ加盟に近づいていたが、現在は特に米国が加盟を支持しないことを明言している。しかし、ウクライナに安全保障を提供する必要がある。その最も強力な方法がNATO加盟だ。戦争を安定的かつ公正に終結させるために、最終的にはウクライナをNATOに迎え入れる必要がある。それまでの間は、ウクライナが自衛できるよう支援を続けることが不可欠だ」と述べた。

一方、トランプ氏は2月にウクライナ侵攻の責任をウクライナ側にあるとする発言をし、28日にはゼレンスキー大統領をホワイトハウスでの会談後に退席させた。また、トランプ氏やルビオ国務長官、ヘグセス国防長官は、ウクライナが領土を譲る形での和平を模索しており、ロシア寄りの姿勢として批判を浴びている。

これに対し、フレデリクセン首相は強い懸念を表明した。

「この戦争はウクライナの問題ではなく、ロシアの問題だ。ロシアは帝国主義的な野望を抱き、人命を奪いながら自らの目標を達成しようとしている。ウクライナの人々は、民主主義と自由を信じる全ての人々のために戦っている。我々がすべき最低限のことは、彼らが自衛できるよう支援することだ」と語った。

また、ウクライナが敗北すればロシアの侵略がヨーロッパ全域に拡大する可能性があると指摘し、「専制的なクレムリンの決定に民主国家が従うのか、否か。その答えはただ一つ、断じてノーだ」と断言した。

さらに、トランプ氏が2月にプーチン大統領と電話会談し、ウクライナのエネルギー施設への攻撃を一時停止する約束を取り付けたものの、直後にロシアがミサイルとドローンによる攻撃を再開したことについて、「この電話会談の結果がこれだ。ロシアが本当に和平を望んでいるのか、疑問を持たざるを得ない」と述べた。

ストルテンベルグ氏も、「平和を実現するには強さが必要だ。軍事力がなければ、意味のある外交は成り立たない。ロシアが戦場で勝てないと理解することが、唯一の解決策だ。そのために必要なのはウクライナへの武器供与だ」と強調した。

『Facing War』はCPH:DOXの主要賞である「DOX:AWARD」にノミネートされており、映画祭閉幕の3月30日まで複数回上映される予定だ。

ソース:Danish Prime Minister Implicity Criticizes Trump At CPH:DOX Opening

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