株式会社KADOKAWAは、2025年3月22日、『新訳 赤毛のアン』(モンゴメリ著、河合祥一郎訳、角川文庫)を発売した。
本作は、カナダの作家L・M・モンゴメリによる名作『赤毛のアン』の新訳版である。NHK Eテレで4月から放送予定のアニメ『アン・シャーリー』(原作は村岡花子訳)の放送を前に、英文学者で東京大学教授の河合祥一郎氏による新たな翻訳が刊行された。

文学少女としてのアンを描く新訳
『赤毛のアン』は、孤児院から引き取られた赤毛の少女アン・シャーリーが、プリンス・エドワード島の美しい自然の中で成長していく物語だ。すでに多くの出版社からさまざまな訳が刊行されているが、河合訳の最大の特徴は「英文学研究の第一人者が訳した、文学少女としてのアン」である点にある。
河合氏は、アンという少女の本質はその豊かな想像力にあると考える。例えば、見知らぬ村にたどり着いた際、迎えが来ないことに不安を覚えるのではなく、桜の木に登って一晩過ごすことを「素敵な経験」と捉える――このロマンティックな想像力こそが、アンの魅力だという。
また、アンの文学的素養の深さも特筆すべき点である。訳者あとがきでは、アンが11歳にして『リア王』『ロミオとジュリエット』『オセロー』『ハムレット』などシェイクスピアの作品を広く知っていることに触れ、英文学への憧れが本作に与えた影響について詳しく解説されている。
完訳・新訳としての魅力
本書は、原作のすべてを訳した「完訳」であり、なおかつ新たな視点を加えた「新訳」となっている。過去にはページ数の制約から抄訳された版も存在したが、今回の河合訳では一言一句が忠実に訳されている。また、2014年に児童向けに刊行された『新訳 赤毛のアン(上・下) 完全版』(角川つばさ文庫)を、大人向けに改訂した内容となっている。
なお、本書の続編として『新訳 アンの青春』『新訳 アンの初恋』も、2025年4月25日に角川文庫から発売される予定だ。
アニメ放送を前に、改めて『赤毛のアン』の魅力を
担当編集者は本書について、「アンのキャラクターが際立ち、展開が早く、非常に面白い。若いころはアンに共感し、大人になるとマリラの視点で彼女を見守る楽しさがある。さらに、プリンス・エドワード島の美しい自然描写が見事に訳されており、ラストは感動的」とコメントしている。
新訳によって、これまでとは異なる視点で『赤毛のアン』を楽しめる一冊となっている。すでに原作を読んだことのある人も、初めての人も、この機会に手に取ってみてはいかがだろうか。
『新訳 赤毛のアン』書誌情報
• 著者:L・M・モンゴメリ
• 訳者:河合祥一郎
• 発売日:2025年3月22日
• 定価:990円(本体900円+税)
• ISBN:9784041160084
• 発行:株式会社KADOKAWA
• 詳細ページ:KADOKAWA公式サイト