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広瀬すず主演『クジャクのダンス、誰が見た?』考察|父と子の愛に始まり、母と子の愛が交錯する展開に【TBS金曜ドラマ】


広瀬すず主演のTBS金曜ドラマ『クジャクのダンス、誰が見た?』はミステリー作品で、考察要素の多い作品だ。かつて起きた東賀山の一家殺害事件と、主人公・心麦の父親である山下春生(リリー・フランキー)の2つの事件を巡る犯人探しの物語は、誰もが怪しく見てきて、誰が犯人かを考えながら見るのが楽しい。

しかし、そうしたミステリーとしての面白さだけに本作の魅力は留まらない。本作は「父と子」の関係性を問うドラマでもあり、さらに事件の真相と相まって「母と子」の関係性がそこに打ち込まれる展開となり、ドラマ要素の見応えもある。

 

心麦と春生

本作の物語は、春生が自宅の火事によって殺害されることから幕を開ける。父は死ぬ前に、馴染の屋台のラーメン屋の染田に手紙を残しており、そこには遠藤友哉(成田凌)が冤罪で捕まるかもしれないと書かれていた。そして、彼の弁護が松風(松山ケンイチ)に依頼しろと書かれており、心麦は父が殺された真相を探るために、松風とともに迷宮のように入り組んだ事件に足を踏み入れることになる。

心麦の行動動機は、純粋に「父を信じる」ということに尽きる。愛する父が自分に残した手紙の内容を信じて行動し、真実を突き止める。そのシンプルな動機を支えているのは、父への愛だ。

そして、彼女は実は春生とは血がつながっておらず、東賀山事件の唯一の生き残りである赤ん坊、林川歌であったことが判明する。父がそのことを隠していたことにショックは受けるものの、それが父の愛情ゆえだったこと、事件で天涯孤独となった歌を不幸にしないための措置だったことがわかり、父の愛を再確認していく流れになる。

この父子を演じるのは、広瀬すずとリリー・フランキーだ。リリー・フランキーをこの役に配役したのは良いアイディアだった。彼のいい人そうに見えて、心の底が読みにくい佇まいが、視聴者にとって信頼を置いていいのかどうか、迷わせることになる。キャスティングひとつでミステリー要素を濃くしていると思う。

一方の広瀬すずの凛とした存在感が、怪しい人間だらけの物語の中で際立った安心感をもたらしてくれる。

 

松風と久世

心麦と行動をともにする松風もまた、父との葛藤を抱えた存在だ。彼の父・久世正勝(篠井英介)は、松風が子どものころに突然失踪し、以降は母子家庭として育った。事件の操作の一環で、元刑事の父を探し出すことになるのだが、その時再会した場所は草野球場だった。父との楽しい思い出はキャッチボールだったことからくるものだろう。この父と子の何十年ぶりかの和解もまた感動的だった。
 

遠藤智哉と遠藤力郎

事件の中心にいる、もう一つの父子関係は、春生殺害、そして東賀山事件で冤罪の疑いをかけられた遠藤友哉と力郎の親子だ。東賀山事件の冤罪によって死刑判決を受けた父の影響で、人生が壊れてしまった友哉だが、それでも父の潔白を晴らそうという思いで行動し、週刊誌記者の神井(磯村勇斗)や春生と接触することになる。父親のせいで人生が狂わされたとはいえ、父への愛情があるだゆえの行動をとる友哉にも、父と子の複雑な愛憎が見え隠れする。
 

赤沢正と赤沢守

同じ刑事の道を歩む息子の守に対して、駄目なところは見せられないと父の正は思っている。そんな父を守は純粋に尊敬しているだろう。しかし、不正も辞さない強引な取り調べなど、正のきれいとは言えないやり口が事件を複雑なものにしていることも確かだ。そして、妻の京子ともども正は心麦に対して何かを隠している。そこにも息子への愛情ゆえという屈折した感情があるようだ。

 

阿南と鳴川

8話で阿南との父子関係が判明した鳴川。検事としての背中を娘に見せたいという一心で、彼は東賀事件の冤罪を生み出してしまう。どこで道を踏み外したのかと自問自答する鳴川をよそに、阿南は検事の責務として、間違いが会った場合は潔く起訴を取り下げ、築いた地位を犠牲にしても構わないと言う。
この父と子の愛情のすれ違いがそもそも冤罪を生んだのだ。
 

そして9話で明かされる強烈な母と子の物語

ここまで、「父と子」の関係性を中心に展開してきたこのミステリードラマだが、クライマックス直前の9話で「母と子」の関係性という要素が、強烈な楔を打ち込むかのように描かれることになった。

東賀山事件で生き残った林川歌は、林川家の妻の子どもではなく、別の女性が生んだこと、そしてその人物が意外な人物であること(こちらの記事を参照してほしい)によって、一層人間ドラマの奥行きが出てきた。最終話まで目のがなせない展開が続く。

「父と子」から始まったと思われたこのドラマは、実のところ「母と子」から始まったとも言える。いずれにしても、家族愛をめぐるミステリーであることは変わりないわけだが、巧みなプロット運びで「父と子」「母と子」の強烈なドラマが交錯する見応えある作品に仕上がっている。

3月28日にどのような最終回を迎えるのか、楽しみだ。

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