ハリウッド・レポーターが2024年のメジャー映画スタジオの業績報告をまとめている。全体的にはコロナ、ダブルストライキの影響から回復しきったとは言えず、そしてNetflixの一人勝ち状態にあることがわかる。
ワーナー・ブラザース・ディスカバリー(WBD)
利益:17億ドル(前年比23%減)売上高:116億ドル(前年比5%減)
WBDは2024年、前年の『バービー』のような大ヒット作に恵まれず、スタジオ部門の総収益と利益が減少した。興行収入の主力は『デューン 砂の惑星 PART2』(7億1500万ドル)、『ゴジラxコング 新たなる帝国』(5億7200万ドル)、『ビートルジュース・ビートルジュース』(4億5000万ドル)だったが、劇場収入は4%減少。また、ゲーム部門の収益は『ホグワーツ・レガシー』の成功を収めた2023年に比べ53%減少した。
一方で、テレビ部門は『ザ・ペンギン』(Max)、『Presumed Innocent』(Apple TV+)、『Georgie & Mandy’s First Marriage』(CBS)などのヒットにより、9%の収益増加を記録。さらに、『デューン 砂の惑星 PART2』や『ゴジラxコング』の好調なホームエンターテインメント販売、ワーナー・ブラザース・スタジオツアー東京の開業もプラス要因となった。
2025年に向けて、WBDは映画の平均制作コストの引き下げを目指し、大作と低予算作品のバランスを取る戦略を掲げる。特にDCユニバースの再生が優先事項であり、『スーパーマン』の公開を皮切りに、新たなDC映画の展開が予定されている。また、ゲーム部門の再編を進め、『ハリー・ポッター』『ゲーム・オブ・スローンズ』『モータルコンバット』『DC(特にバットマン)』の4大フランチャイズに注力し、2025年の黒字化を目指す。
NBCユニバーサル
利益:14億ドル(前年比8%増)売上高:111億ドル(前年比4%減)
ユニバーサル・ピクチャーズは、ディズニーに世界興行収入の首位を譲ったものの、『ウィキッド』(7億2500万ドル)、『怪盗グルー4』(9億7000万ドル)、『カンフー・パンダ4』(5億4500万ドル)、『ツイスターズ』(3億7000万ドル)、『ワイルド・ロボット』(3億2500万ドル)などが好成績を収めた。
利益が増加した要因は、制作費の8.8%削減とマーケティング費の6.1%削減によるものとされる。2025年は『ヒックとドラゴン』『ジュラシック・ワールド リバース』『ウィキッド: フォー・グッド』などの大作が控えているが、公開作品数の増加とマーケティング費の増大により、利益成長は鈍化する見通しだ。
ディズニー
利益:8億6400万ドル(黒字転換)売上高:83億ドル(前年比6%増)
ディズニーは2024年、世界興行収入で54億6000万ドルを記録し、ユニバーサルの37億5000万ドルを大きく上回った。『インサイド・ヘッド2』(17億ドル)、『デッドプール&ウルヴァリン』(13億ドル)、『モアナ2』(10億ドル)がトップ5入りし、強力なIPを活かした戦略が成功した。
収益の増加は、テレビおよびSVODの配信収益の向上によるもので、制作費の削減も黒字転換の要因となった。ボブ・アイガーCEOは「劇場公開作品がストリーミングやパーク事業など、他の事業にも好影響を与える」と強調。2025年には『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』『スノーホワイト』『リロ&スティッチ』『ファンタスティック・フォー:ファースト・ステップス』が控えており、さらなる収益向上が期待される。
ソニー
利益:6億2800万ドル(前年比13%減)売上高:83億ドル(前年比4%減)
『バッドボーイズ:ライド・オア・ダイ』(4億ドル)、『It Ends With Us』(3億5000万ドル)、『ゴーストバスターズ フローズン・エンパイア』(2億ドル)が興行収入を牽引したが、テレビ番組の制作遅延による影響で、テレビ部門の売上が25%減少。2025年以降は、スパイダーマンやジュマンジの新作公開が予定されており、業績の回復が期待される。
パラマウント
利益:-9600万ドル(赤字縮小)売上高:30億ドル(前年比変化なし)
パラマウントは2024年も赤字だったが、10作品を公開し赤字幅を縮小した。『ソニック・ザ・ヘッジホッグ3』(4億8000万ドル)、『グラディエーターII』(4億6000万ドル)、『クワイエット・プレイス:デイ・ワン』(2億6000万ドル)などが好調だった。今後、スカイダンス・メディアによる買収が進む中、事業の立て直しが求められる。
Netflix
利益:70億ドル(前年比49%増)売上高:390億ドル(前年比16%増)
Netflixは9.5百万人の加入者を獲得し、年間売上を16%増加させた。2025年は更なる成長を見込み、売上高435億~445億ドルを予想。ハリウッドの伝統的なスタジオとは異なる収益モデルで、今後も業界をリードしていく見通しだ。
上記の結果を見るようにNetflixが圧倒的な成績を収めている。ディズニーすら大きく引き離されている。それどころか他のメジャースタジオの売上の合計額と一社で張り合えるくらいの売上規模である。完全に業界の勢力図が塗り替わったと言っていいだろう。
※サムネイルがAdobe Fire Flyで生成。