世界の映画興行を代表する組織である世界映画連盟(Global Cinema Federation, GCF)は、最新のグローバル消費者調査の結果を発表した。本調査は、世界15の市場で68,000件以上の回答を集め、映画観客の意識や映画館への期待を明らかにするものだ。
GCFは、世界の映画業界の健全な発展を支援する目的で設立された組織であり、トップ12の映画興行企業のCEOおよび2つの主要業界団体が執行委員会を構成する。また、75の映画興行企業および29の業界団体がアドバイザリーボードとして参画しており、世界の興行収入の約65〜70%を占める業界を代表する団体である。
映画館は依然として魅力的な娯楽手段
調査結果によると、72%の回答者が「映画館での鑑賞は費用対効果が高い」と評価しており、64%が「観たい映画があれば映画館へ行くことに障壁はない」と回答した。また、映画館よりもストリーミング配信を待つと答えた観客はわずか6%にとどまっている。
消費者の娯楽支出全体は6カ月前と比較して減少傾向にあるが、映画館への支出は他の外出型エンターテインメントと比べて安定している。特に44歳以下の観客は、6カ月前より映画館への支出が増加しており、映画館の魅力が若年層を中心に根強いことが示されている。さらに、映画体験に対する満足度を示す「ネット・プロモーター・スコア(NPS)」は37を記録し、34歳以下の観客では48とさらに高い。
最大の課題は「魅力的な映画の不足」
映画館の来場頻度を阻む最大の要因は、「観たい映画が少ない」という点である。しかし、今後公開予定の映画に対する期待は高く、全体の68%が「今後のラインナップに期待している」と回答。特に34歳以下ではこの割合が83%に達した。一方で45歳以上の観客は、映画館に行く時間も意欲もあるものの、自分たちにとって魅力的な作品が少ないと感じている。
ジャンル別では、55%の観客が「アクション/アドベンチャー映画の増加」を希望しており、現在の上映ラインナップに対してさらに多くの作品を求めている。また、51%が「コメディ映画」、46%が「サスペンス/スリラー映画」の増加を希望している。
ローカル映画の充実が鍵、映画館の魅力向上も課題
一部の国際市場では、米国国内市場よりも速いペースで興行収入が回復している。その要因として、ハリウッド映画に依存しすぎず、ローカル映画の多様性と本数が充実していることが挙げられる。また、映画館への来場を妨げる要因として、「近隣の映画館の魅力が低い」(7%)、「上映作品の情報を知らない」(6%)といった点も指摘されている。
しかし、映画館体験への投資は効果を上げており、プレミアムスクリーン、大型スクリーンの導入、飲食サービスの拡充、ファミリー向け設備の強化など、新たな試みが観客の関心と支出を引き続き高めている。
GCF議長のコメント「観客が求める映画の提供が重要」
GCFの議長であるジェーン・ヘイスティングス氏は、
「GCFの目標の一つは、グローバルな映画観客の動向を業界全体で共有し、観客の需要に応えること。映画館の来場頻度を高めるにはどうすればよいかという問いに対する答えは明確であり、それは『観客が観たい映画をより多く公開すること』だ。観客は観たい映画があれば映画館に行くというデータが示されている。また、映画館体験への投資が興行収入の向上につながっている点も重要」と述べた。