独立行政法人日本芸術文化振興会は、令和7年度の文化芸術活動助成事業に関するアンケートの集計結果を公表した。本調査は、助成事業の応募団体を対象に、募集・申請プロセスや審査基準に関する意見・要望を把握し、今後の事業運営の改善に資することを目的として実施された。
調査は令和6年11月1日から12月20日までWebアンケート形式で実施され、令和7年度助成事業に応募した1,944件のうち、回答率は58.8%(1,144件)となった。前年の49.7%(1,048件)を上回り、多くの団体が意見を寄せた。
応募事業の傾向
応募が最も多かった事業は「舞台芸術・美術等の創造普及活動」(35.9%)で、次いで「地域の文化振興等の活動」(27.2%)、「舞台芸術等総合支援事業(公演創造活動)」(15.0%)が続いた。基金事業では「舞台芸術・美術等の創造普及活動」が多く、補助金事業では「劇場・音楽堂等機能強化推進事業」への応募が多かった。
助成事業の情報入手経路
助成事業の情報を得た経路としては、「過去に応募したことがあり既に知っていた」が最も多く81.0%に達した。新規の情報源としては、「振興会のウェブサイト」(72.4%)、「所属する団体からの情報」(70.1%)が上位となり、ウェブサイトの重要性が示された。
募集案内の分かりやすさ
募集案内の分かりやすさについては、全体の75.1%が「はい」または「ある程度分かりやすい」と回答し、概ね肯定的な評価を得た。一方で、「どちらともいえない」(21.5%)や「いいえ」(3.4%)の回答も見られ、更なる改善の余地があることが示唆された。
要望書の記入項目数と作成時間
要望書の記入項目数に関しては、71.3%が「適切」と回答し、「多い」との回答は22.8%にとどまった。作成時間については、56.0%が「妥当」と感じる一方で、「長く感じた」との回答が39.9%に達し、事業内容によって負担感に差があることが分かった。
審査基準の分かりやすさ
審査基準については、多くの応募者が「分かりやすい」または「ある程度分かりやすい」と回答した。しかし、審査項目ごとに評価が分かれており、「優れた芸術性・創造性を有し、芸術的成果を上げることが期待できる企画内容」といった項目に対しては、分かりにくさを感じる応募者も一定数存在した。
プログラムディレクター(PD)・プログラムオフィサー(PO)の認知度
PD・POの配置については「知らない」との回答が66.4%に達し、認知度の低さが浮き彫りとなった。一方で、過去にPD・POの助言を受けた応募者のうち、54.4%が「1年以内に受けた」と回答し、その助言を受けた応募者の86.6%が「活動や運営の改善・発展に役立った」と肯定的に評価した。
まとめ
本アンケート結果から、助成事業の応募者は過去の応募経験を通じて情報を得る傾向が強く、ウェブサイトも重要な情報源となっていることが明らかとなった。募集案内や要望書の記入項目数・作成時間については概ね妥当と認識されているものの、一部改善の余地があると考えられる。
審査基準については、多くの応募者が理解を示している一方で、具体的な項目によっては分かりにくさを感じる点もあり、補助金事業では特に審査基準が複雑化していることが指摘された。そのため、より分かりやすい情報提供が求められる。
PD・POの認知度は依然として低いが、助言を受けた団体からの評価は高く、今後はその存在をより広く周知し、活用を促進することで、助成事業の効果向上につながる可能性がある。
ソース:https://www.ntj.jac.go.jp/assets/files/kikin/artscouncil/r7bosyuu_questionnaire_results.pdf