映画館業界団体のCinema Unitedは、米ラスベガスで開催される映画館業界最大のイベント「CinemaCon」を前に、特別レポート「The Next Great Era of Cinema(映画の次なる黄金時代)」を発表した。本レポートでは、映画館が地域社会への再投資を行い、技術革新を消費者に提供し、映画鑑賞の楽しみが上映後も続くような取り組みを進めていることが紹介されている。
本レポートは「地域社会への再投資」「技術革新」「映画以上の体験」の3つのテーマに分かれ、映画館業界が地域社会の重要なインフラであることを強調している。映画館は小さな町や地方都市、そして大都市において、人々が集う場としての役割を果たしており、その象徴とも言える劇場やチェーンが本レポートで取り上げられている。具体的には、ACX Cinemas、Alamo Drafthouse、AMC Theatres、B&B Theatres、ナッシュビルのBelcourt Theatre、Cinépolis、Cinergy、CMX、Emagine、Event Cinemas、Harkins Theatres、The Lot、Marcus Theatres、シカゴのThe Music Box、PVR INOX、Regal、Santikos、フロリダ州レイクランドのSilver Moon Drive-In、ニューヨーク州サウサンプトンのSouthampton Playhouse、ニューヨーク州ワルシャワのSpotlight Theater、アイオワ州ワシントンのThe State Theatreなど、多様な劇場が紹介されている。
Cinema Unitedは、かつて全米劇場所有者協会(NATO)として知られていたが、新たな名称とアイデンティティを掲げ、映画館ならではの唯一無二の体験を強調するとともに、業界の革新と未来への取り組みを示している。その内容をかいつまんで紹介する。
映画館業界、新たな黄金時代へ
映画館業界は現在、新たなルネサンスの時代を迎えようとしている。Cinema Unitedの特別レポート「ザ・ネクスト・グレート・エラ・オブ・シネマ」によれば、映画館は「地域社会への再投資」「技術革新」「映画以上の価値の提供」という三つの主要なアプローチを軸に、映画体験の革新を進めている。本レポートには、100年以上の歴史を持つ老舗映画館から新興劇場まで、多様な企業が参加している。
地域社会への再投資
映画館は単なる上映施設ではなく、地域社会の文化的拠点としての役割も果たしている。各地の劇場が次世代の映画ファンを育成するために行っている取り組みを紹介する。
ベルコート・シアター(米テネシー州ナッシュビル)は、創造的なプログラムやイベントを通じて地域とのつながりを強化している。俳優のイーサン・ホークや歌手のジョーン・バエズらを招いた上映会、2024年のフランシス・フォード・コッポラ特集など、多様な映画シリーズを展開している。
ステート・シアター(米アイオワ州ワシントン)は、1897年の創業以来、120年以上にわたり地域に根差した映画館として運営されてきた。地元商工会議所と連携し、ハロウィーン上映会やファーム・トゥ・フィルム・フェストなどのイベントを開催している。
アラモ・ドラフトハウスは、劇場のデザインに地域の特色を反映させることで知られる。ワシントンD.C.では政治映画のポスターを掲示し、『インデペンデンス・デイ』の大統領像を設置。一方、インディアナポリスの劇場では、州を象徴するレーストラックのモチーフを採用している。
サウサンプトン・プレイハウス(米ニューヨーク州サウサンプトン)は、2025年に最新鋭のIMAXシアターや35mm映写機を備えた形で再オープン予定。上映後のQ&Aやワークショップなど、観客との交流を深めるプログラムも計画している。
シルバー・ムーン・ドライブイン(米フロリダ州レイクランド)は、1948年創業のドライブイン映画館ながら、レーザープロジェクションを導入するなど技術革新を進めている。上映前にはスワップショップも開催し、幅広い層の観客を集めている。
スポットライト・シアター(米ニューヨーク州ワルシャワ)は、特別なニーズのある家族向けの上映会「Free To Be Me」など、地域に根ざしたプログラムを展開している。
PVR INOX(インド、スリランカ)は、アミール・カーン主演作品の上映シリーズを企画するなど、映画文化の振興に貢献している。
マーカス・シアターズは、映画のプレミア上映を活用し、地域密着型のプロモーションを展開。スポーツ映画『Just a Bit Outside』や『Green and Gold』の上映会を開催し、大きな話題を集めた。
技術革新
映画館の進化は、最新技術の導入によっても加速している。
AMCシアターズは、特大スクリーンと4Kレーザープロジェクションを組み合わせた「XL at AMC」イニシアチブを発表。2025年には米国内の50〜100拠点に拡大予定で、今後7年間で最大15億ドルを投資する計画だ。
このような動きは、映画館が単なる鑑賞施設にとどまらず、文化の発信地としての役割を果たし続けることを示している。映画館業界は、革新と地域貢献を通じて、新たな黄金時代へと突き進んでいる。