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FCC、ディズニーとABCのDEI方針を調査 – メディア業界のDEI施策に波紋


FCC委員長、ディズニーとABCのDEI方針に対する調査を開始

米連邦通信委員会(FCC)のブレンダン・カー委員長は、ディズニーとABCの多様性、公平性、包括性(DEI)方針について調査を開始したことを発表した。カー委員長は以前からDEI施策に対して批判的な立場を示しており、今回の調査はその姿勢を具体化するものとなる。

カー委員長は3月29日、SNS「X」において「FCCの執行局に対し、ディズニーとABCに関する調査を開始するよう要請した」と投稿した。さらに、「ディズニーはアメリカを代表する企業としての歴史を持つが、最近になってDEIに全面的に傾倒した。彼らのDEI施策がFCCの差別禁止規定に違反している可能性があることを懸念している」と述べた。

 

ディズニーの広報担当者は、米メディア『Variety』の取材に対し、「FCCからの書簡を精査しており、委員会の質問に対応する準備を進めている」とコメントした。

ディズニーのDEI方針と規制への適合性

ディズニーは先月、「Reimagine Tomorrow」という、社会的に過小評価されてきたコミュニティの物語を推進するイニシアチブを終了すると発表した。これは、トランプ政権が政府および民間企業におけるDEI施策の撤廃を進める中で行われた動きの一環と見られる。

カー委員長は3月27日付でディズニーのボブ・アイガーCEOに宛てた書簡の中で、「ディズニーが一部のDEI施策を撤回したという報道を目にしたが、依然として重大な懸念が残る。ディズニーが単なる名称変更にとどまらず、実質的に差別的施策を廃止したのかを確認する必要がある」と指摘した。また、「ディズニーの過去および現在の行動が、常にFCCの規制に適合していたのかを検証したい」と述べた。

カー委員長は、2020年の『Variety』の報道を引用し、ABCエンターテインメントが導入した「インクルージョン基準」に言及。この基準では、テレビ番組のレギュラーおよび準レギュラーキャストの50%以上を「過小評価されたグループ」から選出することが求められていた。カー委員長は、これが「制作のあらゆるレベルにおいて人種やアイデンティティに基づく割当を強制するものだった可能性がある」と指摘。「差別的な施策は連邦法の合理的な解釈と矛盾する。これによりアメリカ国民の公正かつ平等な待遇を受ける権利が侵害される」と主張している。

メディア業界全体への影響

FCCは2月にも、コムキャストとNBCユニバーサルのDEI方針に関する調査を開始している。カー委員長は、「コムキャストとNBCユニバーサルがFCC規制および公民権法に適合しない差別的なDEI施策を推進している可能性がある」と懸念を示していた。これに対し、コムキャスト側はFCCの調査に協力する姿勢を示し、「当社は何十年にもわたり、従業員および顧客に対する誠実さと敬意を基盤に事業を展開してきた」と述べた。

さらに、カー委員長は先週、DEI施策を推進するメディア企業に対し、合併・買収(M&A)案件を阻止する可能性があることも示唆した。

トランプ前大統領とディズニーの対立

昨年、ドナルド・トランプ前大統領は、ABCニュースおよび同局のアンカー、ジョージ・ステファノプロス氏を名誉毀損で提訴した。ステファノプロス氏が番組内で「トランプ氏が性加害の責任を問われた」と誤って発言したためである(実際には、ニューヨークの陪審が作家E・ジーン・キャロル氏に対する性的虐待および名誉毀損についてトランプ氏の責任を認めた)。この訴訟は2024年12月に和解し、ディズニーとABCニュースはトランプ大統領記念財団および博物館への1,500万ドルの支払いに合意した。

FCCの調査は、メディア企業のDEI方針をめぐる議論が今後も続くことを示唆している。

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