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米国の圧力に対抗、フランスCNCがEUのストリーミング規制維持へ結束呼びかけ


フランス国立映画センター(CNC)のオリヴィエ・アンラール副代表は、欧州連合(EU)のストリーミング規制を巡る米国の新たな”脅威”に対抗するため、欧州諸国が団結する必要があると訴えた。

アンラール氏は3月28日、リールで開催された国際ドラマフェスティバル「Séries Mania Forum」のステージに登壇し、2026年に見直しが予定されているEUの「視聴覚メディアサービス指令(AVMSD)」の将来について議論した。AVMSDは、欧州各国の政府によって国内法に移行され、米国のストリーミングサービスに対し、配信コンテンツの30%を欧州作品とすることを義務付けている。また、各加盟国はストリーミング企業に独自の投資義務を課すことができる。

しかし、今年2月、米国のドナルド・トランプ大統領が発表したメモでは、海外の米国系デジタルサービスに対する課税制度や規制を”不公平”と指摘。これに対し、アンラール氏は「米国大統領のメモと、それに対する米国内の反応を見れば、これが脅威であることは明白だ」と述べた。

ハリウッドの”黄金時代”復活を掲げる米国

アンラール氏はさらに、「米国の雇用と経済活動の低迷に加え、ロサンゼルスの大規模火災の影響もあり、大統領はハリウッドの黄金時代を取り戻すことを目指している」と指摘。その上で、「その黄金時代は、海外でのロケ撮影や現地の制作投資を義務付ける規制によって失われたと主張されている」と警鐘を鳴らした。

実際、AVMSDの一部はすでに法的な挑戦を受けている。例えば、ベルギーのワロン・ブリュッセル地域が、ストリーミングサービスの現地投資義務を2027年までに2.2%から9.5%に引き上げる計画を発表した際、Netflixはこれに異議を唱えた。同社は国内最高裁に提訴し、欧州司法裁判所への付託を求めているが、欧州映画庁連盟(EFAD)はこの規制を強く擁護している。

アンラール氏は「米国は今後、より攻撃的な姿勢を取るだろう。欧州は団結し、統一した対応を示す必要がある」と強調した。

欧州のデジタル主権を守るために

フランスは、ストリーミング規制の分野で先駆的な役割を果たしており、2021年にはNetflixなどのプラットフォームに対し、フランス国内収益の20%を欧州およびフランスの映画・視聴覚作品に投資することを義務付けた。このうち3分の2は独立系プロダクションに充てられ、制作会社が知的財産(IP)を保持できる仕組みとなっている。この制度により、導入から2年半で10億ドル以上がフランスの映像制作に流入した。

CNCの研究ディレクターであるセシル・ラコウ氏によれば、昨年11月に発表されたARCOMとCNCの共同報告書では、投資義務を導入した欧州各国において、グローバルストリーミング企業の欧州作品への発注件数が2020年から2024年の間に146%増加したと指摘されている。一方、義務を緩和した国では減少傾向が見られる。例えば、イタリアは2024年に投資義務を20%から16%に引き下げた結果、NetflixとPrime Videoの欧州作品発注数がそれぞれ25〜35本から約10本に減少した。

欧州議会議員のロランス・ファレン氏は「攻撃を受けているのは、私たちのデジタル・アーキテクチャそのものだ。これは視聴覚業界や映画の問題を超え、欧州の主権に関わる問題である」と述べた。

ストリーミング企業の立場

一方、AmazonのEUデジタル・フランス担当公共政策ディレクターであるヨハン・ベナール氏は、米国大統領のメモについてのコメントを控えたが、「我々はビジネス企業であり、顧客中心の運営を行っている。規制には当然従う」と述べるにとどまった。

また、欧州視聴覚観測所(EAO)のデータを引用し、「グローバルストリーミング企業は、欧州の視聴覚作品の26%を提供しており、フランスの義務水準20%を上回っている」と強調した。

欧州プロデューサー協会(CEPI)のスサナ・ガト会長は、現在30%とされている欧州作品の割合を50%に引き上げるべきだと主張し、「各国が独自の規制を課すことができる体制を維持することが重要だ」と述べた。

米国と欧州のストリーミング規制を巡る攻防は今後も激化する見通しであり、欧州側の結束と対応が鍵を握ることになりそうだ。

ソース:Séries Mania