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文化庁支援事業で、ベルリン国際映画祭で若手日本人監督3名がフィルムマーケットに参加、監督たちによるレポートが公表


文化庁は、「令和6年度日本映画の海外発信事業」の一環として、ベルリン国際映画祭および併設見本市「ヨーロピアン・フィルム・マーケット」へ3名の若手日本人映画監督を派遣した。本事業は、近年国内外で目覚ましい活躍を見せる若手監督の国際的な知名度向上、業界関係者とのネットワーク構築、国際的な映画産業への見識深化を目的とするものである。派遣された監督は、荒木伸二、草場尚也、串田壮史の3名。

派遣に先立ち、監督たちは事前講義に参加し、マーケット参加中にはワークショップやピッチを行った。また、レセプションや交流会にも積極的に参加し、イベントを見学するなど精力的に活動した。

草場尚也監督は、本事業を経験して海外との国際共同制作への意欲がより高まったと報告している。映画という共通言語があれば、国境や文化、言語の壁を越えることができるという期待感を持てる出会いが多かったという。初めて海外映画祭のマーケットに参加し、「ヨーロピアン・フィルム・マーケット」の会場の熱気に圧倒され、映画人たちがそこから何かを生み出そうとする姿勢に刺激を受けた。ピッチングについては、企画書作成から苦労したものの、事前講義で様々な指摘を受け、映画のビジョンを具体的に持つこと、それを限られた時間内で端的に伝えること、自身の企画の強み、予算規模と現在の体制、そして監督自身の熱意が重要であることを学んだ。
現地のピッチングでは、多くの人が真剣に向き合って助言をくれるなど、映画制作の始まりの場を体験した。自身の企画にヨーロッパでの撮影が適しているという意見もあり、海外展開の可能性を感じたと述べている。また、本事業を通じて、同じく選抜された荒木伸二監督、串田壮史監督という二人の監督との出会いが何より大切だったと語り、今後も交流を続けていきたいとしている。

串田壮史監督は、先輩監督の言葉をきっかけに映画マーケットへの関心を持ち、SKIPシティ国際Dシネマ映画祭事務局からの紹介で本事業に応募した。派遣前にはユニジャパンのオフィスで行われた交流会に参加し、過去の派遣監督から海外でのプレゼンテーションに関するリアルなアドバイスを受けた。予算は国際基準で行うべきであること、名刺に企画ビジュアルや過去作のリンクを貼ることなどが助言された。
事前講義では、フランス在住の映画監督であるロナン・ジール氏から、映画祭の上映歴や海外リリース状況、日本国内の興行収入が監督のレベルを知るための重要な情報であること、海外の共同プロデューサーは日本ですでに予算の半分が集まっていることを期待していること、プレゼン資料はビジュアル要素を多くし文字を少なくすること、そして何よりも監督の映画への情熱を伝えることが重要であると教えられた。
実践形式のピッチでは、一貫性やテーマに対する自身の考えを問われ、資料のブラッシュアップが必要だと感じたという。マレーシアのプロデューサー、ローナ・ティー氏への最終ピッチでは、資料の文字の多さを指摘された。
ベルリンのマーケット会場では、熱気と活気に圧倒され、世界中の映画関係者が映画を売り買いする様子を目の当たりにした。ジャパン・ブースでのピッチでは、相手が自身の目を見て話を聞いているにもかかわらず、自身がパソコン画面の文字を読んでしまっていることに気づき、資料の文字を減らし、ビジュアル要素を増やすことの重要性を痛感した。初対面のプロデューサーは、企画の詳細よりも監督の正体、興味、ビジョン、人柄を知りたいのだと感じたという。
朝食会「New Directors from Japan」では多くの人が自身の企画に興味を示し、ジャパン・ブースでのピッチでは資料の改善により相手の反応が明らかに良くなった。Japan Nightでは、海外のプロデューサーと出会い、交流を深めた。最終日には7つのミーティングを行い、映画を作る目的を共有できる人と出会うことの重要性を感じたと述べている。
帰国後には、映画マーケットは人と人が繋がる場所であり、国際共同製作を目指す監督にとって重要なのは、自身のビジョンと物語を相手に伝え共感を得ることだと改めて認識し、ベルリンで交換した86枚の名刺の相手に進捗を報告できるよう、企画と自身を磨いていきたいとしている。

荒木伸二監督は、応募時点では何が得られるか明確にはイメージできていなかったものの、前年までの参加監督からの話を聞く会や日本での数回のワークショップを通じて目的意識がはっきりしたと述べている。ベルリンのEFMでは、ユニジャパンの尽力によりレベルの高いプロデューサーとピッチを行うことができ、話が通じ、的確な指摘や批判を受けることができたという。
たとえ今回プレゼンした企画を国内のみで制作することになっても、今回得られたフィードバックは必ず役立つと感じている。具体的な企画内容には触れていないが、アートハウス作品にもジャンル映画的なフックが必要であるという意見や、予算を実制作のスケール感ではなく作家から作品が離れていく距離感として捉えるという視点、企画書の全てを完璧に仕上げるのではなく、どの順番で見せ、どこまで考察が済んでいるかを明確にすれば良いというアドバイスなど、貴重なフィードバックを得られたことを明かしている。
具体的な成果はまだないものの、連絡を取り合ったプロデューサーやその他関係者との間で、海外との共同制作が現実的なものとして感じられるようになったと述べている。今後は、他の映画祭の企画マーケットにも積極的に参加し、海外共同制作の実現を目指す意向を示しているが、日本と欧米の地理的な距離が最大の障害であるとも感じている。言語(英語)については気合いで乗り切ったとしており、今後も同様に取り組んでいくとしている。

本事業への参加を通じて、3名の若手日本人監督たちは、ベルリン国際映画祭という国際的な舞台で貴重な経験を積み、海外の映画業界関係者とのネットワークを構築し、今後の国際的な活躍への足がかりを掴んだと言えるだろう。彼らの今後の活動に注目が集まる。

ソース:文化庁事業 「令和6年度日本映画の海外発信事業」 ベルリン国際映画祭 若手日本人監督海外プロモーション派遣監督による参加レポート