フランスの映画監督ニコラ・フィリベールが手がけた短編作品『L’Anniversaire de Nénette(ネネットの誕生日)』が、フランス映画資料館(Cinémathèque française)の特集上映に合わせて公開された。本作は、パリのジャルダン・デ・プラント(Jardin des Plantes)のメナジェリー(動物園)で長年愛されてきたオランウータンのネネットが2019年6月に50歳を迎えた際の様子を捉えた作品である。
ネネットは1972年に推定3歳でボルネオからフランスへとやってきた。以来、彼女は動物園の象徴的な存在となり、年間60万人もの来園者を惹きつけてきた。フィリベール監督は2010年にもドキュメンタリー映画『Nénette』を制作し、彼女の日常と、それを見つめる人々の声を映像に収めた。10年後、彼は再びカメラを手に取り、節目となる誕生日の様子を記録した。
2019年の誕生日当日、ネネットのケージの前には300人から500人もの人々が押し寄せ、祝福の声を上げた。フィリベール監督はその熱気を振り返り、「カメラを固定することもままならず、人の波に押されて息苦しさを感じたほどだった。しかし、撮影を続けることができた」と述懐している。
本作は、2024年3月18日から31日までの期間、フランス映画資料館で開催されたフィリベール監督の回顧特集の一環として上映された。また、映画プラットフォーム「HENRI」にて4月1日まで視聴可能となっている。
現在も健在のネネットは、50年以上にわたり多くの来園者を魅了し続けている。フィリベール監督は「ネネットは単なる動物ではなく、我々自身を映し出す鏡のような存在だ」と語り、彼女を見つめることは人間自身を見つめる行為でもあると強調した。
関連情報 フィリベール監督による2010年の映画『Nénette』についての詳細は、公式サイト(https://www.nicolasphilibert.fr/fr/film/2/nenette)で確認できる。