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フジテレビ中居氏の性暴力、「業務の延長」で起きたと認定:第三者委報告書が「社内風土」を厳しく批判


フジテレビと中居氏による一連の性加害問題を受けて設置された第三者調査委員会が、調査報告書を発表した。

結論的には、中居氏の性暴力が「業務の延長線上」のものであると認定している。事案のあった当日は、中居氏と被害女性の二人の関係であったが、週刊誌報道にもあったように、2人が社外で会うきっかけとなったのは、上司の人間(報告書ではB氏)の呼び出しによるものでということが調査によってはっきりした。

この報告書はかなりフジテレビに対して手厳しい内容だ。こうした女性アナウンサーを社外の会合に呼び出す風土があったということも明らかになっており、それが事案の発生を招いたとしているに等しい。

結局のところ、今回の事案発生は社内風土が背景になると指摘している内容になっている。

まず、BBQのの日だが、中居氏からB氏にショートメールで「女子アナ」を呼ぶように要請して、B氏がそれに答えている。
そのBBQに向かう車の中で、被害女性(報告書ではAさん)は、「仕事でプラスになる」旨を言われたそうで、女性がこういう食事の場でどうふるまえがいいか尋ねたら、皿洗いするなどして働くように言われたらしい。

「仕事でプラスになる」というのは、確かに業務の延長線上に当たると判断されてもおかしくないし、そういうことで「仕事のプラスになる」企業であるということだ。

また、中居氏の事案だけでなく、類似事案も調査をしており、会合の強要があったと回答している女性職員が13.9%、ハラスメントを受けた体験があると回答した女性は15.3%いる。

こうした調査結果と受けて、調査委員会は、「フジテレビは、取引先による性暴力・ハラスメントなどの重大な人権侵害のリスクに関し、少なくとも事業を通じて「関連」しており、また、これを性別・年齢・容姿などに着目して呼ばれる会合の慣行等を通じて「助長」していた可能性も十分認められる」と書いている。

要するに、会合に可愛い女性職員を呼ぶ風習が今回の事案につながっているのだという指摘だ。

にもかかわらず、港社長らは今回の事案を二人のプライベートな問題と認識していた。だが、そもそもフジテレビはこういう会合に参加することを業務に有利になるからという理由で推奨していたと考えられるという。
「番組出演タレント等との会合は、円滑な業務遂行、良好な人間関係の構築、コミュニケーションの活性化、番組企画立案、人脈維持拡大等の業務遂行に資するとして、業務時間外、場所、街道の厳密な参加者などを問わず、広く業務として認められる」と調査委員会は書いている。その上で、「これらの費用は会社の経費として精算されている」とのことだ。

それは完全に業務だ。記者会見では記者の質問に答える形で当該BBQの費用もフジテレビが負担していたと言っていた。会社の関与がなかったというのは、無理がある。

また、人権意識が希薄だという指摘もしており、Aさんから事案の報告を受けた当時の編成局長Gはコンプライアンス推進室に報告をあげなかった。その理由が「フジテレビが情報が漏れやすい会社なので、Aだんが傷つく可能性を考慮した、
女性アナウンサーは常におびえていて、何かあっても言わない人が多い。現在でさえ、女性アナウンサーは「コンプラとかに言わないでください」などと言う人もいて、何か主張していると思われたり、会社に迷惑を駆けたりしたくないと思う傾向がある」というものだ。

コンプラ推進室に報告することを女性アナウンサーは常に怯えているってどういうことなのか。それに、コンプラ推進室の情報がすぐ漏れるというのは、ほとんど推進室の体をなしていないのでは。

総じて、相当にひどい社内風土があると思わざるを得ないような内容だ。

社内風土は長い時間をかけて生まれてしまうものなので、すぐに変わらない。信頼回復のためには、相当な思い切った改革をしないと難しいのではないか。

ちなみに、「テラスハウス」の出演者の自死の件にも触れられていた。あれは番組出演者に対する人権軽視の姿勢が露わになった事例だが、社内の人権が軽視されている状態で外部の出演者にまで人権配慮できるとは思えない。意識をどこまで、そしてどれくらい早く変えることができるのだろうか。

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