文化庁の委託を受け、三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社が実施した「令和6年度著作物等の利用に係る裁定補償金 額算定式精緻化に関する調査研究 報告書」がこのほど公開された。本報告書は、著作権者不明等の著作物(オーファンワークス)の利用円滑化を目的とした現行の裁定制度と、新たに創設された未管理著作物裁定制度における補償金額や使用料相当額の算定方法の精緻化について、その検討の経緯と結果をまとめたものである。
報告書によると、近年、「一億総クリエイター」・「一億総ユーザー」時代を迎え、著作物の適法かつ円滑な利用を促進する必要性が高まっている。しかし、著作権者と連絡が取れないために著作物を利用できないという課題が存在し、その解決策として裁定制度の利用円滑化が求められている。
現行の裁定制度においては、利用者が文化庁が構築した「裁定補償金額シミュレーションシステム」を活用し、補償金額の目安を算出する仕組みが導入されている。一方、令和5年に成立した未管理著作物裁定制度では、文化庁長官の登録を受けた登録確認機関が使用料相当額の算出等を行うことが可能となり、利用者にとってより簡便な仕組みと、著作物等の利用形態に応じた適切な額の算出が求められている。
このような背景を踏まえ、本調査研究では、著作権等管理事業者の使用料規程、著作物取引市場における使用料相場、過去の裁定における補償金額の実績等の調査・分析を行い、シミュレーションシステムに用いられている裁定補償金額の算定式を精緻化することを目的とした。この精緻化は、未管理著作物裁定制度における登録確認機関の使用料相当額算出方法規程の策定にも資すると考えられている。
調査は、「裁定補償金額算定式の検討」、「シミュレーションシステムの保守・運用及びシステム仕様書の作成」、「システム改修の見積取得と費用規模の把握」、「プロジェクト計画書の更新」で構成され、本報告書では主に「裁定補償金額算定式の検討」に焦点が当てられている。具体的には、過去の裁定申請実績の分析、著作権等管理事業者・業界団体へのヒアリングなどを通じて、新たな算定式のリスト作成を目指した。
裁定申請実績の分析では、過去の441件の裁定実績データを詳細に分析し、著作物の種類、利用目的、用いられている算定式等の傾向が確認された。その結果、言語関連の著作物に対する申請が全体の6割を占め、利用目的としては商用利用が最も多いことが明らかになった。また、算定式別に見ると、「言語:書籍として複製・譲渡 本体価格×印税率10%×発行部数×使用ページ数÷本文総ページ数×消費税」が最も多く用いられていることが示された。
著作権等管理事業者・業界団体へのヒアリングでは、現行裁定制度における問い合わせが多い利用方法、未管理著作物裁定制度によって想定される事項、裁定制度における補償金の算出、裁定制度全体に関する意見や要望などが議論された。ヒアリングの結果、使用料率は用途等の条件によって一律に決めることが難しいといった意見や、裁定制度はあくまで権利者が発見できない場合のセーフティーネットであるべきといった指摘があった。
これらの調査・分析を踏まえ、報告書では、言語、脚本、音楽、映画、実演、美術、漫画、写真、ゲーム、地図、演劇といった様々な著作物の種類と利用形態に対応した新たな算定式案が提示されている。しかし、著作権等管理事業者の使用料規程に掲載がない利用形態の扱いや、特定分野で権利者団体が存在しない場合、料率の幅が分野別に大きく異なるなどの理由から、すべての著作物の種類と利用方法を網羅した算定式のリスト作成には至らなかったことが報告されている。
今後の展望として、次年度以降、本報告書の結果を踏まえてシミュレーションシステムの更新が予定されている。また、各団体の使用料規程の更新や、未管理著作物裁定制度の算出方法規程の整備に伴い、同システムの算定式がさらに更新・拡充されることが期待される。文化庁は、裁定制度の利用者と著作権者の双方に資する仕組みとなるよう、裁定補償金額算定式の妥当性について継続的な検討が必要であるとしている。
ソース:https://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/tokeichosa/chosakuken/pdf/94193601_01.pdf