[PR]

トランプ政権の通商戦争、映画・テレビ業界にも波及の可能性:米国映画関連団体もトランプに追随か


米国のドナルド・トランプ大統領は、通商戦争をさらに拡大する構えを見せており、世界の映画・テレビ業界が警戒を強めている。4月2日には、新たな関税措置が発表される見通しで、トランプ氏はこれを「解放の日(Liberation Day)」と名付けている。

これまでトランプ政権は、中国、カナダ、メキシコなどの国々に対して自動車や鉄鋼などの輸入品への関税を導入してきた。映画・テレビ業界が具体的にどのような影響を受けるかは不透明であるものの、関係者の間では影響は時間の問題とする見方が広がっているとScreendailyが報じている。

映像業界への布石──2月のホワイトハウスメモ

2月21日に発表されたホワイトハウスのメモ「海外の強要および不当な罰金・制裁からアメリカ企業と革新者を守る」では、米国の巨大テック企業への海外課税への対抗策が示された。このメモの中で、NetflixやDisney+などの米国ストリーミングサービスに対し「現地制作への資金拠出」を求める各国の法律が名指しされ、特に欧州連合(EU)の「視聴覚メディアサービス指令(AVMSD)」が問題視された。

EU加盟国のうちフランス、デンマーク、スペイン、イタリアなど14カ国がストリーマーに対し現地コンテンツへの出資を義務づけており、これが欧州映画・テレビ制作への投資拡大につながっている。カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、インドネシア、韓国なども同様の政策を導入、または検討中である。

メモでは、これらの政策が「アメリカの主権を侵害し、雇用を海外に流出させ、競争力を損ない、機密情報を敵対的な外国当局にさらす恐れがある」として、関税などの対抗措置を取る意向を表明。米企業に対して懸念の報告を呼びかけた。

モーション・ピクチャー・アソシエーション(MPA)と労働組合が反応

この動きに対し、米国映画協会(MPA)は3月11日、米通商代表部(USTR)に86ページに及ぶ意見書を提出。同書では、オーストラリアからブラジル、中国、フランス、日本、スペイン、英国、ベトナムなど30カ国にわたる貿易障壁を列挙し、特に欧州での「不均衡な投資義務」や、最低30%の欧州コンテンツ比率を求める放送・VODの枠組みが問題視された。

また、英国に関しては、2024年メディア法によってVODサービスがOfcom(英国通信庁)の規制対象となる点が指摘された。

さらに、米国監督組合(DGA)および舞台労働者国際同盟(IATSE)も同日に共同意見書を提出。これらの団体は、ストリーミングへのローカルコンテンツ枠や課税政策を「不公正な貿易慣行」として非難。特にEUおよび英国に対して「アメリカ製映像作品の流通を阻害し、収益を海外に閉じ込め、結果として米国の映像制作が流出している」と強く反発した。

同意見書によれば、2022年比で米国内のテレビ制作が40%減少しており、その一方で英国では米系企業による制作費支出が前年比49%増加。米国内の制作誘致施策は存在するが、包括的な連邦レベルでの対応がなければ状況改善は困難との見解を示した。

欧州の反応と団結の呼びかけ

EU側の対応は現時点では限定的である。3月6日には欧州委員会が「デジタルサービス法(DSA)」や「デジタル市場法(DMA)」に関する批判に対応したが、AVMSDに関する言及はなかった。

これを受け、3月17日には欧州議会文化・教育委員会のエマ・ラフォウィッツ副委員長ら54名の欧州議員が、AVMSD擁護を求める公開書簡を欧州委員会に送付。「AVMSDの撤廃は、欧州各国の文化的主権を失うことを意味する」として強い懸念を示した。

欧州プロデューサークラブのジュリー=ジャンヌ・レニョー専務理事は、「これは視聴覚分野における文化的特例の原則そのものに対する攻撃」とし、欧州、英国、カナダ、オーストラリア、韓国などとの連携を呼びかけた。

フランス映画・テレビ製作者協会Eurocinemaのジュリエット・プリサール事務局長は、「これはプロデューサー、AVMSD、各国の適応権に対する事実上の宣戦布告だ」と述べた。

さらに、フランス国立映画センター(CNC)のオリヴィエ・アンラール副局長は、3月末にリールで開催されたSeries Maniaにて「アメリカからの攻撃は今後さらに激化する」と警告した。

CNCのデータによれば、現地投資義務を導入した欧州諸国では2020~2024年の間にストリーマーによる脚本付き作品の発注数が140%増加。一方、同様の措置を導入していない国ではわずか1%の増加にとどまった。フランスでは、Netflix、Disney+、Prime Videoが2021~2023年にかけて8億6600万ユーロを欧州作品に投資したという。

アンラール氏は「視聴覚作品は単なる商品ではなく、文化的帰属意識を育み、欧州諸国の価値やソフトパワーを世界に伝える手段であり、重要な経済的原動力でもある」と述べ、欧州の団結による対応を求めた。