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ヤンマー製作アニメ『未ル』第1話レビュー:スペースデブリとAIと人の共存という「未来の社会問題」を描く


ヤンマー製作のオムニバスアニメ『未ル わたしのみらい』の第一話を見た。第一話だけど「Episode 079 スターダストメモリー」という題名である。

このアニメシリーズは一話ごとに制作スタジオが異なる。「スターダストメモリー」の制作はLinQ

僕は、この企画の責任者であるヤンマーのCBO(取締役ブランド部長)の長屋明浩氏にもインタビューしたので、氏の言葉を引用しつつ、このアニメをレビューしてみようと思う。

(C)YANMAR

AIと人の共存

主人公は、スペースデブリ(宇宙ゴミ)の清掃人である中年男性のヨシムラ。彼は10年間、この仕事をやってきたベテランと言える立場のようだが、上司からAIの発達で引退しろを言われてふてくされている。そんな折、自分の後任で女性のウミがやって来て、引き継ぎも兼ねて同じ船に乗り込むことになる。

しかし、すでに仕事はAI任せでほとんど事足りる。やることがなくて寝始めるヨシムラを見て、ウミももっと緊張感のある仕事だと持っていたのにと寝ようとするが、大型のデブリが宇宙ステーションに追突の危機が迫り、2人はそれを止めるために行動を開始する。

ヨシムラが、この仕事をしているのは、デブリの事故で娘のカノンを失ったから。今でも娘のことを探しているのだ。

物語は、ウミの正体が、謎の生命体のようなロボット「未ル」であり、その活躍によってデブリの衝突は免れる。あなたのような頑固親父も必要だと思うと言われ、ヨシムラはAIとの共存の未来に向けて教官になる決意を固めるという方向に進んでいく。

Episode 079「スターダストメモリー」先行カット

 

スペース・デブリという近未来の社会問題

本作の物語には、現実社会でも必ず社会問題となるだろう2つの要素を背景にしている。スペースデブリとAIだ。

AIはすでにいろいろなところで議論がおきているので説明不要だと思うが、ヨシムラがAIの発達で引退に追い込まれるというのは、AIに仕事を奪われる人間をストレートに表している。

もう一つのデブリ問題は今後ますます深刻になっていくと思われる。今でも宇宙空間に漂う人工物の9割がデブリらしいが、たまにそれは地表に落下してきているし、デブリが増えれば、本作で描かれたように衝突の可能性は増える。というよりすでにデブリ同士の衝突は起きているらしい。

この物語で描かれた未来は、ケスラー・シンドロームがある程度現実のものとなった未来なのかもしれない。ケスラー・シンドロームとはデブリ同士がぶつかって新たなデブリが自己増殖していくという理論だが、それが続けばいつか人類は宇宙開発どころではなくなるかもしれない、、、というわけだ。実際、宇宙ステーションにあんなでかいデブリが迫ってくるようでは、宇宙進出どころではないだろうなと思う。

これは、そういう未来に起こり得る社会問題を背景にした物語だと思った。

ヤンマーの長屋はインタビューで「この作品は決して軽い内容ではない」と語っていた。

そしてテーマは人と自然の「対峙と調和」であり、さらにヤンマーの理念である「A SUSTAINABLE FUTURE」を伝えたいんだと言っていた。デブリの問題もAIと人の共存もサステイナブルな未来を作る上では避けて通れない問題だろう。

長屋氏は「機械と人間がパートナーとしてより高いレベルで社会と人類に貢献していくということを表現したい」とも言っていたのだけど、ヨシムラが最後にAIとの共存社会に向けて、人間にもやれることがあると考えるように促されるのは、「機械と人間」がパートナーとなるようなそういう社会をイメージしているのだろう。


 

バタフライエフェクト

本作は、バタフライ・エフェクトの概念で、人は生きているだけで何かの影響を与えていると描いてもいた。これは未来を作るのは、一人ひとりの起こすバタフライ・エフェクトの集積であり、だから視聴者も未来に影響を与え責任があるんだということを考えてほしいということなんだろう。

3DCGアニメーションの表現としては、ややフェイシャルが固いかなと感じたが(バンドリとか見た後だとね)、全体的には未来への示唆に富んだ良い内容だったと思う。