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トランプ関税、世界の映像産業に暗雲?ハリウッドは保護主義へと回帰するか


2025年4月、ドナルド・トランプ米大統領が発表した大規模な関税政策が、世界の政治・経済に大きな動揺をもたらしている。大統領自身はこの政策を“解放の日”と称したが、対象となる国はロシアなど一部を除き、ほぼ全世界に及ぶ。関税は最低10%からスタートし、中国など一部の国では50%を超える水準にまで引き上げられる見通しだ。

この発表に対し、各国首脳は怒りと懸念を表明している。中国商務省は「典型的な一方的ないじめ行為」と非難し、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は「数百万人に壊滅的な影響を与える」と警告。オーストラリアのアンソニー・アルバニージー首相も「友人のする行為ではない」と述べた。deadlineのMax Goldbartは、トランプ関税政策の影響について以下にように分析しているようだ。

映像産業に直接の関税はないものの、波及効果を懸念

米国の映画・テレビ産業は長年にわたり、世界各地のコンテンツ産業の成長を後押ししてきた。そのため、今回の関税政策が国際映像業界、とりわけ米国コンテンツに依存する小規模な市場にどのような影響を及ぼすのか、不安の声が広がっている。

現時点では、テレビ番組や映画といった“サービス”の輸出入には直接の関税が課されない見込みである。英プロデューサー団体Pactの代表であるジョン・マクヴェイ氏は、「現段階では、我々のサービスに関税が適用される兆しは見られない」と語る。

また、ある米国ネットワークと取引のある団体関係者も「今回の関税政策は主に自動車などの“モノ”を対象にしており、メディア業界には直接的な影響は限定的だろう」と述べている。

広告市場とローカル制作への圧力が最大の懸念

ただし、サービスに対する関税がないからといって楽観はできない。業界アナリストで元Enders Analysisの代表アリス・エンダーズ氏は、「最も大きな影響は広告市場に及ぶ」と指摘する。関税によって各国の経済が冷え込み、広告費が削減されれば、商業放送局にとっては致命的な打撃となる。

「我々はパンデミック後の停滞期にあり、この政策が回復の妨げになるのは明白だ」とエンダーズ氏は語る。

ハリウッド回帰と保護主義の再燃

映像作品そのものに関税はかからないとしても、米国内での制作回帰を促す“保護主義”の動きが強まっている点も懸念材料である。英国映画協会(BFI)のジェイ・ハント会長は1月、「ハリウッドをめぐる保護主義的な言説」に不安を示していた。

実際、ロサンゼルスでは中規模映画の制作を呼び戻すため、規制や許認可の簡素化、追加料金の見直しといった政策が検討されている。

ある業界団体の幹部は「関税が直接適用されなくても、米国企業に国内制作を促す政治的圧力がかかる可能性がある。これがプロデューサーにとって最大の懸念点だ」と述べた。

地域コンテンツ義務への逆風

ヨーロッパを中心に拡大してきたストリーミング配信への地域コンテンツ義務も、トランプ政権の標的になりつつある。欧州の視聴覚メディアサービス指令(AVMSD)は、配信事業者に対して欧州作品の一定割合の配信や現地制作への投資を求めているが、ホワイトハウスはこれを「米国企業に現地作品への資金提供を強制するもの」として批判している。

米映画協会(MPA)もこの指令に対し、「不均衡な投資義務」との立場を示し、加盟企業に影響調査を行っているという。

フランス国立映像センター(CNC)の副代表オリヴィエ・アンラール氏は、3月末のイベント「シリーズ・マニア」で「ハリウッドは、国外制作やローカル規制によって失われた黄金時代の復活を目指している」と発言。「欧州の映像業界に対して、より攻撃的なアプローチが取られる」との見解を示した。

アンラール氏はむしろ、各国で配信サービスに対する規制を強化し、欧州作品の割合を50%以上とする新たなクオータ制の導入を提案している。

オーストラリアもローカル重視を明言

一方、オーストラリアでは政府がいち早く対応。アルバニージー首相が「豪州作品を守るためにローカルコンテンツのルールを強く支持する」と発言すると、業界団体「スクリーン・プロデューサーズ・オーストラリア(SPA)」は声明を発表。CEOのマシュー・ディーナー氏は「MPAが2004年の豪米FTAに基づく規制を骨抜きにしようと圧力をかけてきたことは明白だ」と述べ、強固な規制枠組みの確立を最優先課題に掲げた。

業界関係者は今後の動向を注視

映像業界では、ここ数年でストリーミング事業者による制作費高騰の影響もあり、米国市場からの急激な撤退は大きな混乱を招きかねない。

関税政策の影響については、現在も業界団体や企業が詳細を分析中であり、今後の展開は“細部に宿る悪魔”によって決まると見られる。

エンダーズ氏は、今回の関税政策について「世界経済のパラダイムシフト」であると警鐘を鳴らす。「これは“交渉”のための関税ではない。トランプ氏の狙いは製造業の国内回帰であり、そのためには関税が恒久的でなければ意味がない」と語った。

「この政策は、トランプ氏が望む限り続くだろう」と、締めくくった。

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