俳優・織本順吉の晩年を記録したドキュメンタリー映画『うしろから撮るな 俳優織本順吉の人生』が公開中である。監督を務めたのは織本の長女であり、脚本家・テレビディレクターとして活動する中村結美。その中村が、自らの手で書き下ろした書籍『ジツゴト 2000の役を生きた俳優・織本順吉』が、映画公開に合わせてキネマ旬報社より緊急発売された。
「ジツゴト(実事)」とは、歌舞伎において、人格的に優れた人物の精神や行動を写実的に表現する演技・演出を指す語であり、真実であること、真剣であることも意味する。タイトルに込められたこの言葉通り、書籍では、演技に生き、2000本を超える作品に出演した俳優・織本順吉の軌跡が、娘の視点で真摯に綴られている。
映画では語りきれなかった数多のエピソードや、老い、家族、死といった重くも避けがたいテーマが本書の中で描かれる。第1章「末期の息が撮りたくて……」にはじまり、戦中・戦後を生き抜いた俳優人生、名監督たちとの交流、家庭との葛藤、そして遺作『やすらぎの郷』(脚本・倉本聰)へと至るまで、俳優・織本順吉という存在の「実事」に迫っていく。
織本順吉は1927年、神奈川県生まれ。本名は中村正昭。高校卒業後、大手電機メーカーを経て1945年に新協劇団に入団、『破戒』の丑松役で初舞台を踏む。後に岡田英次、西村晃、木村功らと劇団青俳を結成し、1980年の解散以降はフリーの俳優として映画・テレビ・舞台で幅広く活動。出演作は2000本を超え、名脇役として昭和・平成の映像文化を支えてきた。2019年3月18日没、享年92。
本書の著者であり映画監督の中村結美は、1960年東京生まれ神戸育ち。銀行勤務を経て放送業界へと転身し、1980年代より数多くの情報ドキュメンタリーや再現ドラマに携わってきた。代表作にNTV『追跡』、『はじめてのおつかい』、TBS『神々の詩』、NHK『わたしが子供だったころ』『総合診療医ドクターG』などがある。現在はBSフジ『華の新春KABUKI』なども手がける。
ドキュメンタリー映画『うしろから撮るな 俳優織本順吉の人生』は現在、新宿K’s cinemaにて上映中。今後も全国各地のミニシアターで順次公開される予定となっている。映画館や書店、各種ECサイトにて書籍とともに本作を追体験してほしい。

書籍情報

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書名:ジツゴト 2000の役を生きた俳優・織本順吉
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著者:中村結美
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ISBN:978-4-87376-495-5
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判型:四六判・並製
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定価:1,980円(税込)[紙版・電子版とも]
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発行:株式会社キネマ旬報社
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発売日:2025年4月3日
販売先:全国書店、上映劇場、Amazonほかオンライン書店、キネマ旬報オンラインショップ
https://www.kinejunshop.com/
映画情報
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タイトル:うしろから撮るな 俳優織本順吉の人生
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監督・撮影:中村結美
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出演:織本順吉、中村矩子
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制作:有限会社かわうそ商会
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配給:パンドラ
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製作年:2024年/日本/82分/カラー+モノクロ
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©かわうそ商会


今後の主な上映予定
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横浜シネマリン(4月12日〜)
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愛知県・シネマスコーレ(4月26日〜5月2日)
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アップリンク京都(5月16日〜)
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第七藝術劇場(大阪・5月31日〜)
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宝塚シネ・ピピア(5月23日〜29日)
(※その他の劇場・スケジュールは公式サイトを参照)