インドの新興ストリーミングプラットフォーム「JioHotstar」が、サービス開始からわずか6週間で契約者数1億人を突破したとVarieryが報じた。。世界的に見ても稀有なこの快挙は、インドの大手財閥リライアンス・インダストリーズとディズニー傘下のインド事業との85億ドル規模の合併によって誕生したJioStarの戦略の成果である。
この統合により、ディズニーの「Star India」とリライアンスの「Viacom18」および「JioCinema」「Hotstar」が一体化。サービス開始時点での契約者数は約4,500万人で、月間アクティブユーザー数は1億8,000万〜2億人にのぼっていた。そこから1億人突破までに要した期間はわずか6週間。JioStarのCEO(デジタル部門)キラン・マニ氏は、「我々は誰も到達していない場所に来た」と語る。
マニ氏によれば、この急成長の鍵は「アクセスの確保」「ロイヤルティの醸成」「価格戦略」の3本柱にあるという。
まず、「あらゆるスクリーンへのアクセス」を徹底した。40社以上のコネクテッドTV(CTV)メーカーや70社超のスマートフォンメーカーと提携し、5,500万〜6,000万台のCTVアクティブスクリーンを確保。「デフォルトアプリとして端末にプレインストールされていることが重要だった」とマニ氏は語る。
次に、利用者がコンテンツライブラリを一定期間無料で体験できる設計にしたことも奏功した。「このアプローチは他のOTTプラットフォームにはなかったが、思い切って実行して良かった」と振り返る。
そして、最大の特徴は価格戦略にある。従来の2大プラットフォームを統合したことで値上げも選択肢となり得たが、あえて月額49インドルピー(約0.57米ドル)という低価格を維持。「インド市場ではまず価値を提供しなければならない」とし、「JioHotstarはもはや“欲しいもの”ではなく“必要なもの”になっている」と強調する。
スポーツコンテンツの強さも特筆すべき点である。特にクリケットの「インディアン・プレミアリーグ(IPL)」は視聴数を大きく牽引。最近のチャンピオンズ・トロフィーでは同時接続数で世界記録を更新し、今や通常の試合でも過去の決勝戦を上回る記録を出しているという。
一方で、「Sparks」プロジェクトではインドの有力クリエイター25人が独自IPを開発。また、コールドプレイのライブ配信やマハーシヴァラートリ祭での12寺院同時中継など、ライブイベントも積極的に展開している。
さらに、縦型の短編ドラマといったモバイル特化型コンテンツにも注力。「アジア全域で何十億円規模の収益を生んでいる」とし、新たなストーリーテラーの登場に期待を寄せている。
海外コンテンツのローカライズにも注力。ハリウッド作品をインドの複数言語に対応させることで視聴数を大幅に伸ばしており、「最も多く視聴されているのは英語ではなくヒンディー語だ」と明かす。
通信事業者との連携でも革新があった。ユーザーが個別に契約する必要なく、既存の通信パッケージに合わせて自動的にJioHotstarが有効化される仕組みを導入。「すべての通信キャリアでこの仕組みを導入したのは初めて」とマニ氏は語る。
今後はAIによるパーソナライズ化にも力を入れる。「同じアプリでも、私と妻と娘では表示される内容がまったく異なる」と述べ、視聴者一人ひとりに最適化された体験を目指す。
スポーツ中継では「キーモーメント」機能により、リアルタイム視聴中に短いハイライトへシームレスにアクセス可能。クリケットの試合ではボール一つひとつに90以上のメタデータが付与されており、音声検索やカスタマイズされたダイジェスト作成も可能となっている。
最後に今後の契約者数について尋ねられると、マニ氏は「100万人到達がこれほど早いとは予想していなかった。だからこそ、今後の数字も予測できない」と述べたうえで、「1億人に到達した今、責任も大きくなった。我々はルールブックを塗り替えている最中なのだ」と語った。