一般社団法人日本映画制作適正化機構(映適)が運用する日本映画制作適正化認定制度は、2025年4月1日より主な見直しを加えた審査プロセスを公開した。映適は、映画制作現場の環境改善とスタッフの生活と権利の保護、地位向上を目的としており、今回の見直しは、2年間の運用実績を踏まえ、映適取引ガイドラインをより多くの制作現場に広めていくことを目指すものである。
主な見直しポイント:
- 事後申請①の提出期限が定められた(クランクアップ後1か月以内)。
- 総合スケジュールに完全休養日の記載が必須となった。
- ポスプロ作業予定表の提出が必須となった。
- 必要書類の一部が編集可能なデータでの提出となった。
- エンドロール原稿の提出が必須となった。
- 「審査から認定まで」の3段階プロセスが明確化された。
- 「改善確約書について」が追記され、認定基準を満たさない場合に今後の改善を約束する書面の提出で認定される場合があるが、同一法人で改善が見られない場合は再度の提出による認定は行われない。
- 「審査結果の公表について」が追記され、原則として審査結果が映適HPで公表される。情報解禁前の非公表希望は事務局への連絡が必要となる。
- 「審査・認定基準」が追記され、審査項目①〜⑨の評価に基づき総合的に判断される。必要に応じて面談や追加書類の提出が求められる。
- 映適取引ガイドライン達成状況のデータが公開された。
これらの見直しは、より透明性の高い審査プロセスと、制作現場における映適取引ガイドラインの遵守を促すことを意図している。特に、完全休養日の記載義務化や、ポスプロ作業予定表の提出義務化は、制作スケジュールにおける労働環境への配慮を強化する狙いがあると考えられる。
映適取引ガイドラインの達成状況:
映適が公開したデータによると、2023年4月1日から2025年2月28日までにクランクアップした93作品(A区分73作品、B区分7作品、C区分13作品)における映適取引ガイドラインの達成状況は以下の通りである。
- 1日あたりの平均撮影時間は8時間49分であり、ガイドラインで定める上限11時間以内となっている。しかし、撮影時間が11時間を超えた日のインターバル取得達成率は77.3%であり、完全な遵守には至っていない現状が示された。
- 1週間あたりの平均休日取得数は2.04日であり、休日の取得達成率は94.3%と比較的高い水準にある。
- 制作費が低い、または撮影スケジュールが短い作品ほど、1日あたりの平均撮影時間が長い傾向にある。
- 日帰りロケメインの作品は、宿泊ロケメインやスタジオメインの作品に比べて1日あたりの平均撮影時間が長く、現場の負担が大きい可能性が示唆されている。
本隊と準備・支度班の実働時間:
特筆すべき点として、「本隊と準備・支度班の実働時間」に関するデータが公開されている。
- 出発から撮影開始までの平均準備・移動時間は、本隊で1時間38分に対し、準備・支度班では2時間26分となっており、両者の差は48分である。このデータは、準備・支度班が撮影外でより大きな負担を抱えている可能性を示唆している。
- 出発から帰着までの時間(移動を含む実拘束時間)は、本隊で11時間09分、準備・支度班で12時間21分となっている。
映適取引ガイドラインでは、準備・撤収(移動時間除く)を含めて1日の作業時間を13時間以内と定めており、このデータを見る限り、平均値としてはガイドラインの範囲内に収まっている。
しかしながら、労働基準法においては、労働時間、休憩、休日等について詳細な規定が存在する。原則として、1日の労働時間は8時間、1週間の労働時間は40時間を超えてはならないと定められており、これを超える場合は時間外労働として割増賃金の支払いが必要となる。また、労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも1時間の休憩を与えなければならない[労働基準法 第三十二条、第三十四条]。
今回のデータでは、平均拘束時間が本隊で11時間9分、準備・支度班で12時間21分となっており、これはあくまで平均値であるため、個々のケースによってはさらに長い労働時間となっているケースもあるだろう。特に準備・支度班においては、より長時間にわたる拘束となっている実態が示唆されており、適切な休憩時間の確保や時間外労働に対する適正な対応が求められる。
映適は、今後も作品認定制度の運用を通じて、映画制作現場の適正化に向けた取り組みを推進していく方針を示している。今回の見直しとデータ公開が、より良い労働環境の実現に繋がるか、今後の動向が注目される。
ソース:https://eiteki.org/wp/wp-content/uploads/2025/03/shinsa_manual_250401_3.pdf