総務省は3日、株式会社フジテレビジョン(以下、フジテレビ)の番組出演タレントと同社社員間で発生した性暴力事案に関する第三者委員会の調査報告書を受け、フジテレビと株式会社フジ・メディア・ホールディングス(以下、フジHD)に対し、放送の公共性や社会的責任に対する自覚を欠いていたとして厳重注意を行った。同時に、一般社団法人日本民間放送連盟(以下、民放連)と日本放送協会(NHK)に対しても、今回の事態を教訓に人権尊重やコンプライアンス徹底を要請した。
第三者委員会報告書で指摘された問題点
令和7年3月31日付けでフジテレビとフジHDが受領した第三者委員会の「調査報告書」では、以下の点が指摘されている。
- 令和5年6月にフジテレビの番組の出演タレントと同社社員との間で生じた事案は、業務の延長線上における性暴力という人権侵害行為であると認められたこと。
- 当時のフジテレビの代表取締役社長らは、この事案をコンプライアンスや経営リスクの問題として捉えることができず、会社の危機管理としての対処をせずに漫然と当該タレントの出演を継続させたこと。
- 令和7年1月17日に実施された同社の記者会見は、社会からの大きな批判を招き、スポンサー離れを加速させた事実からみれば、明らかに失敗であったこと。その背景には、客観的な調査を行ってステークホルダーへの説明責任を全うしようという意識が決定的に欠落していたこと。
- 経営陣の人権意識が低く、令和5年11月にフジHDが策定した人権方針について経営陣のコミットメントが不十分で社内浸透が図られず、人権方針が形ばかりのものであったこと。
- セクハラを中心とするハラスメントに寛容なフジテレビ全体の企業体質があり、全社的にハラスメント被害が蔓延していたと認められ、その原因としてはハラスメントの適切な対処がなされず、さらに被害が生ずるという負の連鎖が繰り返されてきたと考えられること。
- 取締役会による役員指名ガバナンスが機能不全に陥っていること。杜撰な役員指名の背景には、組織の強い同質性・閉鎖性・硬直性と、人材の多様性の欠如があること。
総務省からの確認に対し、フジテレビとフジHDはこれらの調査結果が両社自身の調査結果であると回答した。
放送の公共性と社会的責任への意識欠如を指摘
総務省は、今回の事態はフジテレビとフジHDが、放送事業者および認定放送持株会社として本来有すべき放送の公共性や言論報道機関に係る社会的責任に対する自覚を欠き、広告によって成り立つ民間放送事業の存立基盤を失いかねないばかりか、放送に対する国民の信頼を失墜させたものであると指摘した。
放送法は、放送事業者による自主自律を基本とする枠組みとしているが、今回の事態はこうした放送法の枠組みを揺るがすものであり、放送を公共の福祉に適合させ、その健全な発達を図ろうとする放送法の目的に照らし、極めて遺憾であると強く非難した。
フジテレビ、民放連、NHKへの要請
総務大臣の村上誠一郎氏は、フジテレビとフジHDに対し、今回の事態を厳粛に受け止め、報告のあった「人権・コンプライアンスに関する対応の強化策について」において示された対応の具体化とその着実な実施等を通じて、人権尊重、コンプライアンスやガバナンスに関する施策の実効性を確保するとともに、透明性をもって説明責任を果たす体制を構築し、国民視聴者およびスポンサー等の関係者の信頼回復に社を挙げて取り組むよう要請した。特に、今回の事案をコンプライアンスや経営リスクの問題として捉えていなかった調査報告書の指摘を踏まえ、経営陣の意識改革を強く要請した。
フジテレビとフジHDに対しては、上記の強化策の具体化について4月中に国民視聴者およびスポンサー等関係者にその内容を明らかにし、総務省に報告すること、また、その実施状況についても本日から3か月以内に同様に報告することを求めた。再発防止に向けた取り組みが十分でないと認められる場合には、真摯に取り組むよう必要な措置を求めることがあると警告した。
民放連に対しては、このような事態を再度引き起こすことのないよう、連盟としても人権尊重、コンプライアンスやガバナンスに関する施策の実効性を確保するよう取り組み、この取り組みを加盟各社に徹底するよう要請した。
NHKに対しては、今般の件を教訓として、人権尊重、コンプライアンスやガバナンスに関する施策の実効性を確保するよう要請した。
今回の総務省による異例の厳重注意と各放送事業者団体への要請は、放送業界全体における人権意識とコンプライアンス体制の抜本的な見直しを求めるものと言える。