NHK連続テレビ小説『あんぱん』第2週「フシアワセさん今日は」の第6話では、主人公・のぶとその家族をめぐる物語が、静かでありながら確かな変化を見せはじめた。物語は、亡き父・結太郎の墓が完成し、家族そろって墓参りをする場面から始まる。のぶの幼少期を演じる永瀬ゆずなの無垢な表情が、家族の喪失感と共に、少しずつ前を向こうとする気配を感じさせる、だが・・・という回だった。
※1話のレビューはこちら
※2話のレビューはこちら
※3話のレビューはこちら
※4話のレビューはこちら
※5話のレビューはこちら
屋村草吉、通称「ヤムおんちゃん」(阿部サダヲ)が再登場し、物語に程よいユーモアをもたらす。あんぱんを届けた草吉に、朝田家一同が感謝を伝えるも、「40銭です」ときっちり請求するあたり、彼の人間味と商売人としての顔が垣間見える。貧しさゆえの行動でありながら、憎めない人物像として描かれており、子どもたちの「ヤムおんちゃんは悪い人じゃない」という言葉が、それを象徴している。
家計を支えるべく、のぶの母・羽多子(江口のりこ)は内職を始める。夫・結太郎の「オナゴも大志を抱け」という言葉を胸に、前に進もうとする姿が印象的だ。内職を器用にこなす妹・蘭子(後の河合優実)の描写は、今後の伏線を感じさせる。悲しみの只中にありながらも、それぞれが日常の中で力を振り絞っている姿が丁寧に描かれている。
また、嵩(木村優来)の家庭でも、心の揺れが描かれる。親戚のちひろに「お兄ちゃん」と呼ばれたことで複雑な気持ちを抱き、母の帰りを父・寛(竹野内豊)に尋ねる場面は、少年の不安と期待が交差する繊細なシーンだ。寛が嵩を案内した書斎で登場するのが、嵩の父・清(二宮和也)が携わった漫画雑誌「少年倶楽部」である。この雑誌を通じて嵩の気持ちが少しずつほぐれ、ちひろとの関係も回復していく様子は、メディアや物語が人と人をつなぐ力を示唆している。そして嵩が絵の道に進むためのプロセスがここに現れている。
そして物語のラストでは、のぶが末の妹・メイコの世話を任されるが、突然石材が妹に落ちかけるというハプニングが発生。咄嗟に助けに入ったのは祖父・釜次(吉田鋼太郎)であった。ここで次週に続く。朝田家は一難去ってまた一難という厳しい状況の連続。釜次は無事なのか。
思えば、人の死は昔はもっと身近だっただろう。そういう意味では死は日常の中にある程度組み込まれていたのかも知れないとも思う。家族が悲しみから抜け出し、一歩を踏み出したところでのハプニング。朝ドラ受けの次の番組出演者も固唾を呑んでいたが、視聴者一同そんな気分だろう。
それと、今回のエピソードではのぶの妹・蘭子が内職で手先が器用なことが示された。成人後に蘭子を演じるのは河合優実だが、この描写が今度、どう生かされるのか気にしてみたい。
登場人物
朝田 のぶ(今田 美桜)
朝田 のぶ[幼少期](永瀬 ゆずな)
朝田 結太郎(加瀬 亮)
朝田 羽多子(江口 のりこ)
朝田 蘭子(河合 優実)
朝田 メイコ(原 菜乃華)
朝田 釜次(吉田 鋼太郎)
朝田 くら(浅田 美代子)
屋村 草吉(阿部 サダヲ)
原 豪(細田 佳央太)
柳井 嵩(北村 匠海)
柳井 嵩[幼少期](木村 優来)
柳井 登美子(松嶋菜々子)
柳井 清(二宮 和也)
柳井 寛(竹野内 豊)
柳井 千代子(戸田 菜穂)
柳井 千尋(中沢 元紀)
宇戸 しん(瞳水 ひまり)
黒井 雪子(瀧内 公美)
小川 うさ子(志田 彩良)
山下 実美(ソニン)
辛島 健太郎(高橋 文哉)
座間 晴斗(山寺 宏一)