オーストラリアの映像業界団体であるScreen Producers Australia(SPA)は、長らく導入が遅れているストリーミングサービス向けのローカルコンテンツ規制について、即時施行の必要性を訴えたとdeadlineが報じた。背景には、米国のドナルド・トランプ前大統領による新たな国際貿易関税政策による混乱と、その影響を受けるオーストラリアの映像産業の不安定な状況がある。
SPAは最新の会員調査結果を発表し、「多くのプロダクションが、規制の遅延によって深刻かつ悪影響を受けている」と指摘。CEOのマシュー・ディーナー氏は「プロジェクトの承認が停滞し、失われた案件や崩壊した案件が170件を超えた。これにより推定で10億豪ドル(約630億円)の損失が発生し、雇用も1万5,000件以上減少した」と語った。
この調査は、トランプ氏による関税政策の発表前に実施されたものだが、米国を拠点とするストリーミング企業に対するコンテンツ義務化は、米国政府および映像業界団体であるモーション・ピクチャー・アソシエーション(MPA)の反発を招いている。MPAは、2004年の豪米自由貿易協定(FTA)で合意された地元コンテンツ規定を「抵抗し、遅らせ、骨抜きにする」姿勢を取ってきた。
こうした圧力にもかかわらず、オーストラリアのアンソニー・アルバニージー首相は「オーストラリアの物語がオーストラリアの画面に残るよう、我々はストリーミングサービスでのローカルコンテンツを強く支持する」と発言し、規制導入への意思を改めて表明している。ただし、制度の導入はすでに18か月以上にわたり遅延しており、現時点では法的な枠組みが存在しない。
米国通商代表部(USTR)の「外国貿易障壁報告書」では、オーストラリアの国家文化政策「Revive」が名指しで言及され、同国のコンテンツ配信政策がFTAに反する可能性があるとして監視対象とされた。
SPAのディーナー氏は「この政策の行き詰まりが、プロジェクトの承認遅延の主因となっている。案件ごとの停滞や崩壊が、投資や雇用の喪失、事業の不確実性、さらには地元コンテンツの減少に直結し、その影響は今後長期にわたって続く」と警鐘を鳴らす。
さらに氏は「視聴者が急速にストリーミングに移行しているにもかかわらず、我々のコンテンツ規制はそれに追いついていない」とし、制度の早期整備を政府に強く求めた。
SPAは、地元産業の経済的利益と多様な物語文化を守るためにも、今こそ即時の規制導入が不可欠であると訴えている。