株式会社帝国データバンクは8日、2024年度における出版社の倒産動向を発表した。それによると、2024年度の出版社倒産は31件にのぼり、前年度(17件)から約1.8倍に増加。2015年度以来、9年ぶりに30件を上回った。新型コロナウイルス流行以降、低水準で推移していた倒産件数は再び増加局面に入った。
背景には、ペーパーレス化や電子書籍の普及、SNSや動画配信サービスなどネット媒体の台頭により、紙媒体全般の需要が減少していることがある。雑誌の休刊・廃刊が相次ぎ、情報流通の形態がオンラインへとシフトする中で、出版業界の事業環境は厳しさを増している。
とりわけ打撃を受けているのが、小規模出版社である。紙やインクといった原材料価格の高騰に加え、少子化による読者人口の減少が、特に副教材や大学向け専門書を手がける出版社の経営を圧迫。廃業や清算を選ぶ事業者も少なくない。
帝国データバンクの調査によれば、2023年度における出版社のうち36.2%が赤字に陥っており、この比率は過去20年で最大。減益を含めた「業績悪化」企業は全体の6割を超えた。
今後も少子高齢化による市場縮小や、オンライン広告への予算移行による広告収入の減少、人件費や資材コストの上昇が続く見通しで、出版業界を取り巻く環境は一段と厳しくなるとみられる。印刷業、書籍小売業など周辺産業も同様の影響を受けることが予想されており、出版業界全体として、デジタル化の促進にとどまらず、DXやIT化による生産性向上と流通体制の再編といった抜本的な対策が急務とされる。