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第78回カンヌ国際映画祭公式ラインナップ一覧――日本からは早川千絵監督『ルノワール』がコンペティション部門に選出


第78回カンヌ国際映画祭(2025年)の公式上映作品が、現地時間4月10日、パリ・UGCモンパルナス劇場にて発表された。会見には、映画祭プレジデントのイリス・ノブロックとディレクターのティエリー・フレモーが登壇し、コンペティション部門をはじめとする各部門の上映作品を明らかにした。

本年のコンペティション部門には、ベルギーのダルデンヌ兄弟やイランのジャファール・パナヒ、アメリカのリチャード・リンクレイターといった名匠に加え、インディーズ映画界の重鎮ケリー・ライカート、前作『わたしは最悪。』でレナーテ・レインスヴェに女優賞をもたらしたヨアキム・トリアー、『TITANE/チタン』でパルムドールを受賞したジュリア・デュクルノー、さらにはベルリン映画祭で金熊賞を受賞したカルラ・シモンら、多彩な顔ぶれが並ぶ。

日本からは、早川千絵監督の最新作『ルノワール』がコンペティション部門に正式選出された。早川監督は、長編デビュー作『PLAN 75』が「ある視点」部門にて上映され、カメラドール特別賞を受賞した実績を持つ。今作で2作連続のカンヌ出品となり、日本映画としては唯一のコンペティション部門入りとなる。

『ルノワール』は、1980年代後半のバブル期の日本を舞台に、11歳の少女・沖田フキが家族の不和をきっかけに成長の一歩を踏み出す姿を描く。主演を務めるのは、12歳の新星・鈴木唯。仮に彼女が主演女優賞を受賞すれば、日本人として初、かつ史上最年少の快挙となる可能性がある。共演には石田ひかり、中島歩、河合優実、坂東龍汰、リリー・フランキーら実力派が名を連ねる。

早川監督は「少女の複雑な感受性と豊かな孤独が、観る人の心に触れることを願っている」とコメント。本作は6月20日より新宿ピカデリーを皮切りに全国公開が予定されている。

また、「ある視点」部門には、ノーベル文学賞作家カズオ・イシグロのデビュー作を原作にした『遠い山なみの光』(石川慶監督)が選出された。主演は広瀬すず、共演に二階堂ふみを迎え、戦後の長崎と1980年代のイギリスを舞台に“記憶”が交錯する人間ドラマを描く。本作は日本・イギリス・ポーランドの国際共同製作で、今夏、ギャガ配給にて公開される予定だ。

さらに、ミッドナイト・スクリーニング部門には、異色のサバイバルスリラー『8番出口』(川村元気監督)が選出された。本作は、世界的な人気を博したインディーゲームを原作に、主演・二宮和也と川村監督がタッグを組んだ意欲作である。無限にループする地下通路を舞台に、異変を見極めながら「8番出口」を目指すという体感型スリラーであり、観客に高い没入感を与える。

『8番出口』は、2023年にKOTAKE CREATEが単独開発したゲームを原作としており、全世界で150万ダウンロード、YouTubeでの関連動画再生回数は1億回を突破するなど社会現象となった。映画化の発表時からSNSで大きな話題となり、二宮和也の出演発表とともに公開された特報映像はX(旧Twitter)で2,800万以上のインプレッションを記録している。公開は2025年8月29日を予定しており、すでに18以上の国と地域での配給が決定している。

主演の二宮は「カンヌの舞台に立てるのは夢のよう」と語り、川村監督も「日本の地下通路映画がカンヌに呼ばれるとは、まさに“異変”だ」と喜びを示した。

今年のカンヌ国際映画祭には過去最多の2,909本が応募され、コンペティション部門には19作品が選出。そのうち6作品が女性監督によるものである。映画祭は現地時間5月13日(火)から24日(土)まで開催される予定で、審査員長にはフランスの名優ジュリエット・ビノシュが就任。他の審査員は後日発表される。

今年の公式ラインナップは、例年に比べて若手監督や新たな才能に光を当てた“若返り”の印象が強く、カンヌの新たな潮流を感じさせる構成となっている。

オープニング作品

『Partir un jour』アメリー・ボナン監督*(アウト・オブ・コンペティション部門)

コンペティション部門

『The Phoenician Scheme』ウェス・アンダーソン
『Eddington』アリ・アスター
『Jeunes mères』ダルデンヌ兄弟
『Alpha』ジュリア・デュクルノー
『ルノワール』早川千絵
『The History of Sound』オリヴァー・ハーマナス
『La petite dernière』アフシア・エルジ
『Sirat』オリヴァー・ラクセ
『New Wave』リチャード・リンクレイター
『Two Prosecutors』セルゲイ・ロズニツァ
『Fuori』マリオ・マルトーネ
『O Secreto Agente (The Secret Agent)』クレベール・メンドンサ・フィリオ
『Dossier 137』ドミニク・モル
『Un Simple Accident』ジャファール・パナヒ
『The Mastermind』ケリー・ライカート
『Aigles of the Republic』タリク・サレー
『Sound of Falling』マシャ・シリンスキー
『Romería』カルラ・シモン
『Sentimental Value』ヨアキム・トリアー

「ある視点」部門

『La misteriosa mirada del flamenco (The Mysterious Gaze of the Flamingo)』ディエゴ・セスペデス*
『Météors』ユベール・シャルエル
『My Father’s Shadow』アキノラ・デイヴィス・ジュニア*
『L’inconnu de la Grande Arche』ステファン・ドゥムスティエ
『Urchin』ハリス・ディキンソン*
『Homebound』ニーラジ・ガイワン
『遠い山なみの光』石川慶
『Eleanor the Great』スカーレット・ヨハンソン*
『Karavan』Zuzana Kirchnerova*
『Pillion』ハリー・ライトン*
『Aisha Can’t Fly Away』モラド・モスタファ*
『Once Upon a Time in Gaza』アラブ&タルザン・ナサール
『The Plague』チャーリー・ポリンジャー*
『Promised Sky』エリーゲ・セヒリー
『Le città di pianura (The Last One for the Road)』フランチェスコ・ソッサイ
『Testa o croce? (Heads or Tails?)』マッテオ・ゾッピス、アレッシオ・リーゴ・デ・リーギ

アウト・オブ・コンペティション部門

『Colours of Time』セドリック・クラピッシュ
『La Femme La Plus Riche Du Monde』ティエリー・クリファ
『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』クリストファー・マッカリー
『Vie privée』レベッカ・ズロトヴスキ

ミッドナイト・スクリーニング部門
『Dalloway』ヤン・ゴズラン
『8番出口』川村元気
『Feng Lin Huo Shan (Sons of the Neon Night)』ジュノ・マック

カンヌプレミア部門

『Amrum』ファティ・アキン
『Splitsville』マイケル・アンジェロ・コヴィーノ
『La ola (The Wave)』セバスティアン・レリオ
『Connemara』アレックス・ルッツ
『Orwell : 2+2=5』ラウル・ペック
『Das Verschwinden Des Josef Mengele (The Disappearance of Josef Mengele)』キリル・セレブレニコフ

スペシャル・スクリーニング部門

『Stories of Surrender』ボノ
『Tell Her That I Love Her』ロマーヌ・ボーランジェ
『A Magnificent Life』シルヴァン・ショメ